【主張】第189回通常国会に望む

公開日 2015年01月25日

 国会は丁寧にわかりやすく、国民に説明する姿勢で審議を進めてほしい。かつて米軍が銃剣とブルドーザーで、沖縄県民の土地と生活を奪ったことをまねるような、強権的な政治は望まれていない。沖縄の4つの小選挙区では、自民党が議席を得られなかったことを重く見るべきだ。

 先の総選挙で、自公の与党はかろうじて議席数を保ったが、勝ったという言い方はあたらない。これまで暴走してきた自民党の議席数は少し減り、ブレーキ役の公明党の議席数が補った。野党の構成も自民党にすり寄る勢力が減少して、批判的な勢力が強まった。

 自民党は比例区の絶対得票率が16.99%にすぎず、選挙制度の欠陥による虚構の多数を保ったことを、謙虚に自覚するべきだろう。小選挙区での得票には、公明党の票が加算されていることも自覚すべきだ。

 安倍総理の「私が最高責任者だ」という言葉の意気込みはわかるが、上滑りしている危険性がある。医療の世界では医師の判断よりも、治療を受ける患者の判断が尊重されるようになっている。十分な説明に基づく納得という意味の、「インフォームド・コンセント」という言葉はよく知られており、政治の世界でも採用するべきだろう。

 また、「この道しかない」という言葉にも危険性が感じられる。巨象が歩いても道はできない。急峻な崖は道にならない。みんなが歩くところが道になる。すべての道がローマに通ずる、と言われるほどたくさんの道をつくって、ローマは栄えた。選択肢はたくさんある方がよい。

 安倍政権が進める政策の根本には「構造改革」と、自民党結党以来の悲願とまで言う「憲法改定」があるようだ。乱発された法案のいくつかの矛盾点を指摘して、検討を求めたい。

 まず、構造改革は小さな政府、自由競争、自助自立などを旗印にしているが、庶民には、医療、年金、福祉の過酷な削減を行い、消費増税はそっくりそのまま企業減税に流用し、大企業には様々な支援策と補助金を与えて、大規模公共事業による利益まで与えているのは、どこか矛盾していないだろうか。抜本的な再検討を望みたい。

 次に再生可能エネルギーだ。排ガス削減は必要だが、原発の危険性は明らかだ。日本は自然エネルギーに恵まれており、活用が期待されている。欧州には自然エネルギーが消費電力の30%ほどを賄うようになった国々があるが、日本はまだ数%である。ところが再生エネルギー支援策が早くも打ち切られつつあり、電力会社は受け入れを制限するという。言うこととやることが矛盾していないか、検討を求めたい。

 原発管理にも矛盾がある。世界最高水準の安全性を確保すると言いながら、避難計画を要件から外し、安全設備が未完成でも再稼働を認めるという。そのうえ原子力規制委員会は、新規制基準が安全を保障しないという。では誰が安全と判断するのだろうか。脳みそのない怪物に放射性マネーを撒かせないでほしい。戦争する国も論外である。

(『東京保険医新聞』2015年1月25日号掲載)

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