【主張】新規認定打ち切り、有料化を許すな!! 引き続きぜん息医療費の助成を

公開日 2014年09月25日

 東京都知事は、猪瀬氏から舛添知事に代わった。しかし、今夏「東京公害患者と家族の会」(以下、患者会)が、ぜん息医療費助成制度見直しの撤回を求めて東京都と行った交渉では、昨年10月に東京都が示した方針に変わりがないとの回答であった。

 すなわち、新規の認定申請の受付は2015年3月31日限りで終了し、2018年度以降は助成を3分の1に減らす予定である。しかし、認定者は増え続け、18歳以上では2014年7月末現在8万928人が助成を受けている。

 前回(本紙2014年2月5日号「主張 7万7,000人が利用「ぜん息医療費全額助成制度」を存続せよ」)でも述べたが、東京大気汚染公害訴訟弁護団が独自に国及び加害企業に接触して確認したところ、双方とも東京都に対して「具体的な提案を出してほしい」と財源拠出の可能性を含む回答を示したにもかかわらず、その後東京都からはそれに対する返事はなかったという。

 今回、特に東京都の46地区医師会のうち43(94%)という多くの地区医師会が「東京都大気汚染医療費助成制度の存続を求める要請書」を提出した。また、患者会が呼びかけた舛添都知事あて要請ハガキが、今年8月20日現在で累計8,836通に達している。

 患者会が発行する「ユズリハだより」(74号)によると、東京都は2014年9月の都議会で『ぜん息医療費助成財源を3分の1にし、医療費の支払いが一定額を超えた分を助成する。2015年3月末で新規認定を終了。同期日までに18歳未満の患者は18歳になると助成が終わる』との条例改定を承認させる構えだ。

 18歳未満の場合、大気汚染の影響を受けると認定される疾病は、気管支ぜん息、ぜん息性気管支炎、肺気腫、慢性気管支炎である。2014年3月31日現在、認定患者総数9万5,011人のうち18歳未満の1万6,077人が助成を受けている。

 条例が改定されると、18歳に達すると同時に3割負担が発生し、発作が起きても医療機関を受診するのをためらい、早期治療と継続的治療につながらず、その結果、ぜん息死につながる可能性がある。特に現在若者の多くが非正規労働者であり、かつ低賃金で働き、通常の診療時間内の通院も困難な状況にある。突然の発作に救急での対応は費用がかさみ、さらに治療が遅れることになりかねない。

 「ユズリハだより」(75号)によると、2014年8月8日に都庁記者クラブで行われた会見で18歳未満の患者の保護者による訴えがあり、保護者の娘さんが11年間ぜん息で苦しみ、未だに治らずにいることへの不安を書いた手紙を患者会の事務局長が代読した。また、12歳の長男が1歳から11年間ぜん息が続いていることから、将来にわたって治療を必要とする可能性があり、是非この制度を存続してほしいという訴えがあったという。

 気管支ぜん息は、未だに年間2,000人以上が死亡する病気である。早めの対応が命を救う。舛添知事と東京都は都民の生命を守る立場から、一人ひとりの患者やその家族の声に真摯に耳を傾け、現行制度の全面的な存続を図るべきである。

(『東京保険医新聞』2014年9月25日号掲載)