【主張】7万7,000人が利用「ぜん息医療費全額助成制度」を存続せよ

公開日 2014年02月05日

 2007年に東京大気汚染訴訟が東京高裁で和解。国、東京都、自動車メーカーおよび首都高速会社が財源を拠出し、都のぜん息医療費助成制度が発足した。

 現在、18歳以上の7万7,000人の患者が認定を受けて健康保険の自己負担が無料化されている。18歳未満の方は、既にマル都の制度がある。従って、現在の助成制度は、18歳以降も連続して助成の対象になる極めて重要な制度である。

 今回、5年後の見直しの時期にきて東京都の出方が注目されていた。患者会は助成制度の継続を目指し、都庁前に真夏や寒風のなか、座り込み等を行い、認定患者に配布した猪瀬前知事宛の継続要請ハガキは2千数百通に達した。協会でも会員から患者に直接ハガキを手渡していただいた。この場を借りて、協力いただいた会員各位に感謝申しあげる。

 患者会は地域の医師会も訪ねて実情を訴えた。その結果、都内の全53地区医師会中、41医師会が都知事宛の要請書を提出するに至り、都議会各会派にも働きかけて一定の理解が得られた。

 しかし、東京都は11月5日の都議会で、1)本制度は2015年3月まで現行の医療費全額助成を継続し、以後は3分の1の助成とする、2)2015年4月以降、新規の認定を終了する、3)経過措置として、既認定者については2018年3月まで全額助成を継続する、と発表した。2014年度末で、拠出した2百億円の財源がなくなるとの理由で新規申請を中止するとのことだ。

 当院の患者を診ても、助成制度により定期的に薬の服用と吸入を行って症状が改善し、ぜん息発作で息せき切って飛び込んでくる等の、救急措置が必要なケースは激減している。

 今回、東京都は制度打ち切り方針を、国やメーカーに財源拠出を要請することなく決定したという。東京大気汚染公害裁判弁護団が独自にメーカー側や国と接触したところ、メーカーは「社会貢献の見地からであれば制度存続のため拠出検討の可能性はある。具体的な要請をしてほしい」と都に回答している。しかし「その後、都から何の話もない」ことがわかった。また、国も「具体的な提案を出してほしい」と都に回答したが、その後返答がなかったという。国やメーカーからの協力が得られなかったという都の発表と食い違っていることが分かった。

 協会では、昨年12月5日付で、猪瀬前知事宛にぜん息医療費助成制度の存続と新規患者受け入れの継続を要請しているが、制度存続は、都知事選挙の大きな争点の一つだ。劇場型の都政ではなく、都民の健康で安定した生活が保障される都政であってほしい。協会の取り組みもその観点に立った活動であり、今後も運動を継続し、さらに全国に広げるために会員諸先生のご協力を切にお願いする。

(『東京保険医新聞』2014年2月5日号掲載)