【主張】実質マイナス改定に断固抗議する

公開日 2014年01月25日

 安倍内閣は2013年12月20日、次回診療報酬の改定について、14年4月の消費税増税に伴う医療機関の負担増を補填する部分を除いて実質的にマイナスとすることを決めた。マイナス改定は6年ぶりとなる。

 今次改定では、本体部分を0.73%引き上げる一方、薬価は0.63%引き下げ、全体で0.1%引き上げるとしている。しかし、これには消費増税補填分1.36%の引き上げ分を含むとされているため、実質的には1.26%のマイナスとなる。

 いわゆる「アベノミクス」により輸出企業を中心に利益を伸ばしているが、その利益は従業員の給与引き上げには一向に反映されていない。保険医療分野では、自公政権下の02年から10年まで続いた診療報酬マイナス改定により医療機関の経営は逼迫し十分な人件費を確保できない状況が続いてきた。公的医療の「質」と「量」は診療報酬により担保されるが、長年に渡る診療報酬引き下げはこの「質」と「量」を決定的に低下させ、日本全土で「医療崩壊」を引き起こした。今また保険医療機関の原資である診療報酬を引き下げれば、多くの医療機関で従業員の給与削減も検討せざるを得ない事態を招く。アベノミクスは、社会保障の解体を狙っており、今回のマイナス改定は「医療崩壊」に拍車をかけるもので、断固容認することはできない。

 中央社会保険医療協議会(中医協)で今後、診療報酬の配分作業が進められる。改定骨子では、「医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実」を進めるため医療法の改定も同時に進められ、「医療提供体制の再編」が大きな柱にすえられている。

 外来医療では、安上がりの医療・介護を目指す「地域包括ケア」に向けて、「主治医機能の評価」と称して診療所・200床未満病院の患者(高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症)を対象に赤字におとしめる包括点数の導入が検討されている。さらには、処方薬を一元管理する体制の構築などが検討されるなど、地域医療を支える開業医の役割を低下させ、患者のフリーアクセスを侵害しかねない問題を孕んでいる。 在宅では、在宅療養支援診療所の要件の厳格化、訪問診療料における「同一建物」の考え方を在宅時医学総合管理料・特定施設入居時等医学総合管理料にも導入しようという議論が行われており、在宅医療を献身的に取り組む医療機関の診療報酬を大幅に減少させることが懸念される。

 一般病棟入院基本料では、短期間で退院可能な手術や検査対象患者(短期滞在手術基本料)を平均在院日数計算対象から除外する。さらに、7対1と10対1も90日超入院患者の特例制度を廃止し、7対1要件にDPCデータ提出、在宅復帰率、急性期リハ体制整備を要件化するなどの検討が行われている。

 一般病棟7対1入院基本料の要件強化では、「重症度・看護必要度」の評価項目の見直しで、3割近い医療機関が規定の患者割合を満たせないという試算も示されており、強行されれば約10万人の患者が影響を受けることになる。7対1等の急性期病床について今後患者ニーズに沿った見直しを行う場合も、拙速に行うのではなく、医療機関が無理なく対応できるよう十分な準備が整った段階で実施すべきである。

 一方、中医協審議において成果もある。「内服薬7種類以上の算定制限」を巡り、京都協会のアンケート調査を端緒として全国25都県の各協会より2,502件(うち、東京協会集約分417件)の回答を集約、11月に厚労省交渉、中医協委員への要請等を実施した。その後の中医協論議で診療側委員は「この理不尽な7種類規制は次回改定で完全撤廃すべきである」と強く発言しており、まさに協会の運動が中医協審議に一石を投じるものとなった。

 新点数の詳細が今後明らかになってくるなか、協会はあくまで医療現場の声に依拠し、保険医の要求を第一にかかげ、主張と批判を積極的に展開していく。

(『東京保険医新聞』2014年1月25日号掲載)