【主張】信じる一票を投じよう

公開日 2013年07月15日

 自民党は6月20日「参院選公約2013」を発表した。「原発再稼働」、「消費増税」、「TPP」、「憲法改定」などに前のめりである。民主党は2009年の衆議院選挙において原発、消費税、TPP、米軍基地強化の4項目すべてに反対する公約を掲げたが、選挙後にはことごとく推進側にまわって国民の怒りを買った。そのため2012年の衆院選挙では、はじめから推進側にいた自民党が大勝利を得た。民主党は先の都議会議員選挙で惨敗し都議会第4党に転落した。2大政党のどちらが勝っても保守政権が続くという、財界が望んだ2大保守党体制が完成したのかもしれない。

政党方針を見極めよう

 参院選に向って各党の公約が出そろったが、論点は多岐にわたる。しかも各候補者が政党の主張とは正反対のことを語る無責任が許されており、投票先を決めにくい。当選して議員になれば党議拘束という枠をはめられて、党の方針に従う駒になるので、まるでオセロゲームのようになる。有権者はまず、政党の方針を確認するべきだろう。社会保障については、「税・社会保障の一体改革」のために福祉削減を行う政党までが「医療・介護・福祉を充実する」と言っているので油断ならない。

消費税増税は医院経営を直撃する

 消費税は所得の少ない人に負担感が重く、福祉に逆行する税である。また、医療機関には重くのしかかる「損税」であり、医師は事業と生活で二重の被害を受けることになる。消費税増税は中止するしかない。

原発再稼動―命より利益優先でいいのか

 原発からの廃棄物は、もとのウラニウムの1万倍の放射能を持ち、1万年ものあいだ管理しなければならない。青森県の仮置き場はほぼ満杯に近い。放射性廃棄物の危険性は、電力の恩恵をはるかに超えており、医師が最も危惧するところだ。国内の原発すべてを停止しても、電力は不足しないことが実証されている。

 福島の事故が終息せず、検証も賠償もしていないのに、どうして「安全」と言えるのか。原発を再稼働するのは、被災者の辛苦を無視するものである。原発の段階的縮小も10年後の廃炉も、危険な再稼働をすることでは同じである。金銭的な利益のために他人の命を危険にさらすことは許されることではない。他人に恐怖を与えることは犯罪である。原発政策は、再稼働ゼロしかありえない。

格差医療を許さない――TPP参加中止を

 北米3カ国の自由貿易協定(NAFTA)により、カナダとメキシコから米国への農産物輸出が増加した。しかしその実態は、両国に進出した米国資本の農業会社が農地を買い占め、農民を安価に働かせて利益を上げていた。両国の国民は貧しくなっていたのだ。TPPは社会のありかたまで変える協定だ。医療の分野ではまず薬価が上昇し、保険改定時にも値下がりしなくなる。やがて新薬や新しい治療を保険収載できなくなる。保険外診療が増加すれば、そのための民間医療保険が肥大化して利益を上げ、やがて診療内容にも介入してくるだろう。めぼしい病院が巨大資本に買収されて利潤追求型に変えられれば、格差医療の社会が作られていく。

 人々が瀕死の病人でも誠意をもって接するように、政治を見捨てないようにしよう。保険医として信じる一票を投じたい。

(『東京保険医新聞』2013年7月15日号掲載)

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