【主張】社会保障制度改革国民会議 国民不在で負担増を推進――参院選で厳しい審判を

公開日 2013年03月25日

国民会議で社会保障の解体を論議

 昨年、8月10日、「社会保障と税一体改革」を実現させるため、消費増税法案などとともに、社会保障制度改革推進法案が参院本会議で可決された。

 この社会保障改革推進法は、社会保障制度への公費負担を削減し、国民が支払う保険料で賄う保険制度へと変質させる。給付を削減して費用負担を国民に課す、いわば社会保障制度解体法である。

 この法律により、社会保障の解体を推進する役目を与えられたのが、社会保障制度改革国民会議だ。

給付抑制と負担増のオンパレード

 会議は3月までに6回開催されているが、公表されている議事録を読むと、「長期的なビジョンを持って、給付を抑制していくことが重要」「制度が持続可能となるよう、負担の引き上げ、給付の削減を」「年金、医療、介護は社会保険制度を基本とするという3党合意は画期的」「多病でいくつもの診療科を受診する高齢者を1人の医者が総合的に診れば医療費削減になる」「後発品の使用促進で医療費がいくら減るか議論を」「介護でも一定以上所得者の自己負担を」等々、給付抑制と負担増を求める発言が続出しているのが特徴だ。

 社会保障への公的支援を求める声は少数派であるが、「保険原理そのものが成り立たなくなっている」「保険の中での応能負担(再分配機能)をより高めていくのか論議すべき」「低年金者が多いなか、低所得高齢者への対応を検討すべき」などと主張しており、貴重である。

 1月21日の第3回国民会議は、麻生太郎副総理の「高齢者はさっさと死ねるようにしてもらう」発言で物議をかもしたが、いわゆる「終末期医療」も、当然、国民会議の守備範囲であり、麻生副総理の発言は国民会議の本音というところだろう。

 第4回は日本経済団体連合会、経済同友会、日本商工会議所、日本労働組合総連合会からのヒアリング、第5回は全国知事会、全国市長会、全国町村会と財政制度等審議会からヒアリングが行われた。財界は給付の抑制と消費税増税や国民の負担増を要求し、企業が負担する各種税と社会保険料の軽減を求めている。

財界要求の露骨な具体化

 この財界要求を忠実に実現しようというのが第5回の財政制度等審議会からのプレゼンテーションである。給付の重点化・効率化と称して、1)70歳から74歳の医療費の自己負担を1割から2割に戻す、2)平均在院日数の減少で公費4,400億円を削減、3)後発医薬品の更なる使用促進、4)介護は医療と同様に自己負担割合を見直す、5)年金はデフレ下でも、年金給付額を引き下げる方向に働くマクロ経済スライドを適用し、支給開始年齢を引上げること、等々を求めている。

社会保障費の拡大が防衛予算の足かせ

 特に際立ったのが、田近財政制度分科会会長代理の発言だ。「(予算の中で)医療の自然増と技術革新部分で増えた歳出部分を他のどこかで切るというゲームをいつまでやれるのか」「財審で議論したのは、特に今年辺り国防をどうするか、防衛費はどうするか。こうした予算をずっとカットし続けることができるのか。申し上げたいのはこういうことなのです」という。つまり、社会保障負担のおかげで軍事費を拡大できないとまで言い出しているのだ。

国保の財政難を一顧だにせず切り捨て

 一方、国保の財政難を訴え、国庫負担割合の引き上げを求めた地方3団体に対して、同席していた財務省側はなんと応えたか。竹内財務政務官は、「社会保障の持続可能性の確保のためには公費負担割合の引き上げではなくて、給付の重点化・効率化(削減)をはじめとする給付構造の改革を行うべきである」「まずは関係の皆様の更なる御努力や制度の改革というものが不可欠であろうと思っている」と、国保への財政支援という、地方自治体の切実な要求を一刀両断に切り捨てている。

夏の参院選で暴走にストップを

 社会保障制度改革に関する法制上の措置は、全て「国民会議」の議論を踏まえることとされ、社会保障制度の「改革」に強力な権限を持たされた「国民会議」は8月21日までにその提言を取りまとめることが決められている。そして秋には消費増税の実施を時の政府が判断することになっている。

 増税と社会保障制度改悪にストップをかけられるかどうかは、今夏の参議院選挙をはじめ、国民の世論にかかっている。

(『東京保険医新聞』2013年3月25日号掲載)