【主張】税制改正に敏感であれ――消費税「損税」解消に声を上げよう

公開日 2013年02月15日

 2013年度税制改正大綱(1月29日閣議決定)は、医療機関の「消費税損税」について一切触れなかった。自民党税制調査会では「適切な措置を講ずる」と明言していたこともあり、医療界を大きく失望させた。

 消費税は、モノやサービスなどの「価格」に課税されるため、「誰が負担するか」は問題にならない。診療報酬が「非課税」であるため、医療機関は仕入れや設備投資にかかる消費税を患者から回収できず、払いっぱなしとなる。国としては、消費税相当額が国庫に納まればいいので、誰の金だろうと関係ない。こうして、医療機関は毎年莫大な「損税」を負ってきた。

 「消費税分は診療報酬で補てんされている」との国の論理は詭弁で、1989年(平成元)の消費税導入時も、1997年(平成9)の5%増税時も、つまみ食いするように加点された点数を見れば、診療科や設備によって算定に偏りが出るのは明らかだ。しかも加点された当時の項目すら、その後、マイナス改定、包括化、あるいは消滅して、いまや補てんの恩恵を感じられる部分はまったく残っていない。

 医療機関の損税解消について、国は積極的に動かない。患者は、損税の存在そのものを知らない。つまり、医療機関が声を上げない限り、いつまで経っても“物静かな”医療機関が、泣く泣く消費税を払い続けることになる。

 自公政権も民主党政権も、保険医療にかかる取り引きは「消費税課税になじまない」と主張しているのだから、医療機関が余計に支払った消費税を還付してもらうのは当たり前の話ではないか。

 大綱で損税関連の文言が削除されたのは許せない。だが、少なくとも自民党内には、「医療機関の損税を解決しなければ」という問題意識のあることが明確になった。つまりは、消費税の構造に欠陥があることを、すでに与党内の多くが認めているのだ。いまこそ声を大にして、この不公正を正すべき時だ。

 困窮する国民と日夜相対している医療者こそ、税制改正に対して常に敏感であるべきだ。国が、与党が、どんな着眼点を持ち、国民の納めた税金で何をしようとしているのか。医師の目でしっかりと見極め、意見を述べていこう。

(『東京保険医新聞』2013年2月15日号掲載)