医科歯科研究会 口腔ケアは認知症予防に効果――医・歯連携医療に保険適用を

公開日 2013年04月05日

講演する伊藤眞一先生

東京保険医協会・東京歯科保険医協会・千葉県保険医協会は2月23日、医科歯科連携研究会を開催し、医師・歯科医師ら合わせて70人が参加した。今回は「一病息災を目指した糖尿病の医科歯科連携」のテーマの下、野村慶雄先生(神戸常盤大学短期大学部口腔保健学科教授)と伊藤眞一先生(全国臨床糖尿病医会会長)より講演があった。

第1部では野村先生が「糖尿病と歯周病の医科歯科連携」と題して、糖尿病と歯周病の関連について理論的に説明。歯周病治療による糖尿病改善の症例等を用いて密接な関係があることを示した。また貝原益軒の「凡そよき事あしき事、皆ならひ(習慣)よりおこる」という養生訓を紹介しつつ、生活習慣病予防のための日々のブラッシングの重要性や、医科・歯科双方からの定期的な患者ケアの必要性を強調。連携のためのツールとして歯周病細菌に対する抗体価測定キットを紹介した。

70人が参加した医科歯科連携研究会の様子

第2部では伊藤先生より「歯周病と糖尿病の関係を考える~心血管症と認知症を意識しながら~」として自身の症例も含めて報告した。HbA1cの値がこれまでのJDS値から0.4%高いNGSP値に変更があったことに触れ、「HbA1c(NGSP)値は7を基準に判断してほしい」と述べた。また歯周病治療でHbA1cが1%改善することはインクレチン投薬と同程度の効果であるとし、「歯周病は糖尿病の第6の合併症であり、歯科受診を促すことが重要だ」と訴えた。

講演後半では自身の患者で孤独死例が出現したことをきっかけに、認知機能の低下した糖尿病患者についての取り組みを報告。認知障害程度が重くなるほど残存歯数も少ない傾向にあることを確認した上で、「認知症の予防には歯数を保つことが重要で、内科医は眼科医との連携と同様に歯科医師との連携が必要だ」、「後期高齢者の糖尿病患者の3分の1は認知障害があると考え、歯科医はキーパーソン(家族)、かかりつけ内科医と連絡をとることが重要」と指摘した。

その後の質疑・ディスカッションでは「歯周病の抗体価検査の保険収載が医科歯科連携をより緊密にするために必要ではないか」という意見があり、野村先生は「知見があれば保険収載もありうるが検査キットが高価なこともありなかなか進まない。しかし歯科でHbA1c値を測定して医科に紹介したり、逆に医科で歯周病抗体価を測って歯科に紹介する、ということが技術上も保険請求上も可能にならなければ連携は進まないのではないか」と答えた。

医科歯科連携研究会は年に1回のペースで開催している。今後も継続して開催していく予定なので、ぜひご参加いただきたい。