「新専門医制度」は医師のキャリア形成に重大な影響をもたらす―男女を問わず、多様な選択肢を保証すべき―

公開日 2016年04月28日

2016年4月28日

厚生労働大臣 塩崎 恭久 殿

東京保険医協会
サルビア会・就労環境部長
成瀬 清子

 「新専門医制度」は、2015年度に医学部を卒業したすべての医師が対象となり、2015年4月から初期臨床研修に入った医師が、2017年度から3年間の後期研修(専攻医研修)を受け、2020年度には新たな専門医が誕生する見込みです。

 3年間の後期研修は初期臨床研修とは異なり、「医師法」によって定められたものではありません。国により義務化された研修ではないにもかかわらず、厚労省はすべての医師が専門医を取得することを基本として制度設計を推進しています。

 「新専門医制度」における後期研修終了時の医師年齢は最短でも29歳となります。医師としての臨床現場でのスタートが30歳となることに対して、「新専門医制度によって、女性医師は結婚や出産、家庭を持つことを諦めざるを得ない状況に追い込まれる」「高度な医療技術を身につけようと思えば、30歳からさらに研修を受けなければならず、研修を終える頃には30代半ばに達する」「キャリアを優先すれば、女性だけでなく男性医師も育児休暇を取りにくくなる」など、懸念の声が相次いでいます。

 2014年医師・歯科医師・薬剤師調査(厚労省実施)によれば29歳以下の医師数男女比は男65.2%、女34.8%となっており、女性医師の割合は年々増加しています。また、医学部の男女比構成も同様の傾向を示しており、女性医師の果たす役割はこれからますます重要になってきます。

 数年間の研修を要す「新専門医制度」は、結婚・出産・子育ての時期を迎える30代へ、男女を問わず多大な影響を及ぼします。また、親の介護、自身の病気、あるいは志望科変更など、研修中断を余儀なくされる状況への対応も定まっておりません。さらには、基礎研究、災害ボランティア、開発途上国や国内過疎地での医療活動など、若い医師が必要とされる場が評価されません。医師のキャリア形成にマイナスになる面を考慮し、以下を要望します。

 一、「新専門医制度」が医師のキャリア形成に及ぼす影響を早急に検証すること

 二、男女を問わず、多様な選択肢が保証される制度設計に変更すること

 三、ワークライフバランスに配慮し、女性医師はもちろん、男性医師も子育てしやすい制度設計に変更すること

 四、現状のままの制度実施は見合わせて延期とすること

以上

「新専門医制度」は医師のキャリア形成に重大な影響をもたらす―男女を問わず、多様な選択肢を保証すべき―[PDF:94KB]