麻しん・風しん混合ワクチン不足への対策と定期予防接種の対象児への経過措置を求める緊急要望書

公開日 2016年11月21日

厚生労働大臣 塩崎 恭久 殿
厚生労働省 健康局長 福島 靖正 殿

東京保険医協会
会長 鶴田 幸男

 本年8月から発生した関西空港や首都圏を中心とする麻しんの流行により、東京都内でも一部の医療機関ではMRワクチン(麻しん・風しん混合ワクチン)の入手が困難となり、子どもへの定期接種の実施すら困難な状況が続いています。

 貴省では、9月9日付の事務連絡等により子どもへの定期接種を優先する等の配慮を行うことを各都道府県を通じて医療機関等に要請していますが、11月初旬に当協会が主な卸会社への聞き取りを行ったところ「流通回復の見込みが立たない」や「少なくとも新規の医療機関からの注文には対応不可能である」など未だに混乱している状況が聞かれます。

 一方で医療機関においては、第1、2期の定期接種分のワクチンすら調達できず、なかでも定期接種の第2期の対象児(小学校就学年の3月末まで)について期限内に接種が完了しない恐れが出ています。この場合、適切な時期に接種が受けられないばかりか、接種費用が全額自己負担となるため、1回につき1万円程度が保護者の負担として重くのし掛かります。その結果、課題である接種率向上どころか多くの未接種者が生じることとなり、将来今回のような突発的流行が発生した際に感染拡大の要因になりかねません。

 現在、MRワクチンの国内生産体制はわずか3社の民間企業に委ねられており、最新の数字では2015年度の生産本数は約220万人分1)ですが、このうち子どもへの定期接種分として約210万人分2)が必要でした。近年では定期接種に加え、風しん・先天性風しん症候群対策として妊娠を希望・予定する女性らにも一部公費助成により接種が行われているほか、昨年10月には北里第一三共が力価不足の恐れがあるとして38万本を自主回収するなど、もともと全国的に逼迫した状況であったことは周知の事実です。

 直近でも2008年の麻しん、2012年から2013年にかけての風しんなど、突発的な流行が起きる都度にワクチン不足による混乱が繰り返されています。既存の国内ワクチン生産・流通体制を一刻も早く改善するとともに、一部地域で子どもへの定期接種すら実施が困難な現状を鑑み、国の責任で以下の対応を早急に行うよう要望します。

  1. MRワクチンの流通偏在・不足状況の実態把握に努め、その内容を明らかにするとともに、速やかにその状況の改善を行うこと
  2. 子どもへの定期接種(MR第1期・2期)について、今般の混乱によりやむを得ず対象年齢を超えてしまった児への経過措置を新たに講じるとともに、当該接種費用について現行の定期接種A類と同様の財政措置を行うこと

以上

1)  一般社団法人 日本ワクチン産業協会「ワクチンの基礎2016 ― ワクチン類の製造から流通まで」(2016年8月改訂版)より
2)  厚生労働省「麻しん風しん予防接種の実施状況(2015年4月1日~2016年3月31日)」より

MRワクチンの不足改善と経過措置の創設を求める要望書[PDF:81KB]