保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

都内小児科の7割が「MRワクチン足りない」!―東京保険医協会ワクチン供給不足問題・緊急アンケート

公開日 2016年12月05日

東京保険医協会ワクチン供給不足問題 緊急アンケート/集計結果(2016年12月5日)[PDF:3MB]
MRワクチン不足に関するこの間の動き/続報(2016.12.21)[PDF:381KB]
日本脳炎ワクチンも「足りない」![PDF:110KB]

 麻しん・風しん混合ワクチン(以下、MRワクチン)について、政府は「不足が生じない見込みである」と回答してきました。しかし、11月末現在、東京都内の一部の医療機関では未だにMRワクチンの入手が困難であり、なかには子どもへの定期接種を実施することも厳しい事例も聞かれます。主要な卸業者はいずれも、「ワクチン不足は全国的に起きていて、年明けまで解消の目途は立っていない」と答えています。
 協会は、11月21日に厚生労働大臣宛に「定期予防接種の対象児への経過措置を求める緊急要望書」を提出。さらに協会会員(小児科・内科等)への緊急アンケートを実施し、約2週間で362件の医療機関から回答を得ました(回収率11.21%)。
 その結果、都内で小児科の70%、内科の64%で「ワクチンが不足している」と回答。さらに、「ワクチン不足のために子どもの定期接種が期間内に打ち終わらない可能性がある」との回答が半数を超えることも明らかになりました。

 ここにアンケートの集計結果をご報告するとともに、国・地方自治体に対してはワクチン供給が一朝一夕で回復しない状況を鑑み、定期接種に対する経過措置をとることなどを要望するとともに、将来的な供給体制の安定化に関する施策を国の責任で検討することを求めます。

東京保険医協会 ワクチン供給不足問題 緊急アンケート 実施概要

形式 FAXアンケート
抽出対象 第一・第二標榜に小児科、内科、耳鼻咽喉科、産婦人科を含む、協会にFAX番号登録のある会員
対象期間 2016年11月18日~12月2日
送信数 送信総数3,368件(うち不達139件)、到達件数3,229件
返信数 362件(うち当該予防接種未実施 37件)
 小児科90件/内科235件/耳鼻咽喉科8件/産婦人科20件/その他9件
回収率 11.21%
質問項目 1.主たる標榜科目
2.現在、ワクチンの在庫は十分に確保されていますか?(MR、B型肝炎、日本脳炎)
3.接種希望者へはどのように対応していますか?(3ワクチン別、複数回答)
4.定期予防接種対象者のうち、ワクチン不足のため定期接種の期間内に打ち終わらない人が出る可能性
5.供給不足が年明けまで続く緊急事態への対応として、「費用助成期間の延長措置」が必要だと思うか
6.そのほか、ワクチンに関してお気づきのこと、お考え等
備考 ・回答には定期予防接種の未実施医療機関も含まれる。
・予防接種未実施の回答者については1~4の集計対象外とした。
・アンケート項目が矛盾する回答については回答者へ確認のうえ回答を確定している。

 都内小児科の7割が「MRワクチン足りない」!

子どもの定期接種「期限内に打ち終わらない可能性50%超」の異常事態!!

MRワクチンの在庫
定期接種期間内に打ち終わらない可能性

 MRワクチンは、今年の全国的な麻しん流行によって子ども以外の接種希望者も増大した。一方、国内での製造メーカーのうち、北里第一三共が2015年10月に力価不足問題で自主回収・出荷停止となった影響が現在も解消されていない。当初からワクチン供給不足が懸念されていたが、厚労省は「不足が生じない見込みである」と回答していた(2016年10月4日初鹿明博衆院議員の質問答弁書より)。
 ※追記 なお、製造メーカーの問題については、12月6日の厚労省レクチャーにおいて担当の方から「北里第一三共社の生産本数分は残りの2社でカバーしているので総量は足りるはずだ」との回答があった。

 しかし、協会のアンケートでは11月末時点で、都内で小児科の70%、内科の64%で「ワクチンが不足している」と回答し、さらに、50%超の医療機関で「ワクチン不足のために子どもの定期接種が打ち終わらない可能性がある」ことが分かった。

 定期接種期間中に打ち終わらない場合、ワクチンの代金は原則全額自己負担となる。従来より接種率が低い東京都では、未接種者に対する助成を実施する自治体にもばらつきがあり、今後さらなる接種率低下が心配される(PDF報告資料p.14-15参照)。

希望者への対応――「大人の接種見合わせ」「期さえも待たせている」

「足りている」と答えた医師も、在庫の確保に苦心・・・地域間格差も

 実際に接種希望者にどのような対応をしているか尋ねたところ、「例年通り接種できている」という声がある一方で、「ふだん見ている患者を優先」「大人の接種を見合わせている」「Ⅰ期を優先してⅡ期を待たせている」等の回答が多く寄せられた。

 小児科では「全面的に対応不可能」の回答はほとんどなかったが、「Ⅰ期さえも待たせている」が15件にのぼった。内科では「全面的に対応不可能」が多くなっており、一部は予防接種の取り扱い医療機関でない可能性もあるが、MRを子ども優先とする通知が出されたことから、内科で在庫を確保できずに接種を断っている状況が推測される。また、同じく「Ⅰ期さえも待たせている」が16件あり、小児科と併せて全体回答数の10%が1歳への接種すら打てない状況が明らかとなった。

 「足りている」「例年通り接種できている」と回答した医療機関でも、「順番待ち」「入ってくるのに時間がかかる」といった付記が散見された。在庫を確保するために医療機関が苦心し、希望者への対応にも多大な労力を割いている様子が窺える。
 一方で、地域によっては問題なく注文できると回答したところもあり、流通状況に差が見られた。

 卸業者からの情報不足や、厚労省・自治体の対応に不満を訴える声も多く寄せられている。

 
 

 定期接種が打ち終わらなかった場合の延長措置「必要」と答えた医師が95%!

画像の説明

 「ワクチン不足によって定期接種が期間内に打ち終わらない場合、期限延長等の経過措置は必要と思いますか?」との問いに、95%の医師が「経過措置は必要だ」と回答した。


 参考値を除き、23区内では17区で半数以上の医療機関が「MRワクチンが足りない」と回答。6区では8割以上にのぼった。
 「足りている」と答えた医療機関でも、「大人の接種を見合わせ」「いつもの患者を優先して新規希望者を制限」「Ⅱ期を待たせてⅠ期を優先」等、在庫調整に苦心しながらなんとか接種しているとの声が多数寄せられた。
 一方、「都度注文でも問題なく入荷できる」「自治体が一括して購入するため供給が回復した」との声もあり、地域差が存在することも窺える。

 参考値を除き、23区内は12区の医療機関で、2人に1人の割合で期間内に打ち終わらない可能性のある子どもが出る懸念を感じている。
 全体を通してもワクチンの供給不足が原因で3人に1人以上打ち終わらない自治体が多数を占めるのは異様な事態といえる。

 東京保険医協会ワクチン供給不足問題 緊急アンケート/集計結果(2016年12月5日)[PDF:3MB]


追記:衆議院・厚生労働委員会で取り上げられました

 協会ではアンケート速報を元に12月1日に国会行動を実施し、厚生労働委員会の委員を中心に要請を行い、12月2日の衆議院厚生労働委員会にて民進党・初鹿明博衆院議員からMRワクチンの不足についてご質問いただきました。
 (正式な議事録はまだ公開されていないため、文字起こしはこちらをご覧ください)

 また、12月6日には小池晃参院議員の要請で厚労省レクチャーが行われ、協会事務局も同席させていただきました。
 厚労省担当者の方からは、「現在も地域的偏在はあるかもしれないが総量として足りているとの認識は変わっていない。北里第一三共社がつくっていない分の本数は残りの2社でカバーしているので、総量は足りるはずだ」「ただ、今回東京でこうしたアンケート結果が出て、回答数が少ないので都全体の傾向を語るのは難しいが実際に不足する事態が起こっているのは事実なので、その偏在をいかに解消していくか考えなければならないと思っている」とのご回答をいただきました。

 協会では引き続き医療機関での不足状況や、11~12月にかけての極端な供給不足の原因について情報収集を行っています。
 お気づきのことがありましたら、都内・都外問わず、ぜひ事務局まで情報をお寄せください。よろしくお願いいたします。(2016年12月8日追記)

MRワクチン不足に関するこの間の動き/続報(2016.12.21)[PDF:381KB]

協会では引き続きワクチン供給に関して情報を収集しています。お気づきの点やご意見をお寄せください。
TEL 03-5339-3601 FAX 03-5339-3449 MAIL info@hokeni.org
東京保険医協会 地域医療部

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