【解説】「審査対策講習会を開催―レセプト点検強化への対策」

公開日 2016年12月25日

審査対策講習会写真

東京では、支払基金・国保連合会ともに審査に突合点検、縦覧点検が導入され、請求時のレセプト点検がますます重要になっている。また、保険点数の複雑化により日々のレセプトの作成も負担が増しており、最新の情報にもとづき、ポイントをおさえて請求を行っていく必要がある。協会審査対策委員会は12月3日、全電通ホール(千代田区)で査定・減点対策をテーマにした審査対策講習会を開催し、340人が参加した。以下、その内容を解説する。

突合点検

 突合点検とは、処方せんを発行した医療機関のレセプトと、その処方せんに基づいて調剤を行った薬局のレセプトをコンピュータを用いて患者単位で紐付けし、医療機関で院内処方が行われているレセプトと同様の点検を行うことである。

 主な点検対象は、①薬局から請求があった医薬品に対して、医療機関のレセプトに適応の病名があるか、②医薬品の投与量・投与日数が過剰なものでないか、などである(図表1)。

 例えば、ある医薬品の用法で1日200mgが上限と定められているにもかかわらず薬局から1日300mgで請求が出ている際、その請求が医療機関からの指示だった場合には、医療機関が減点を受けることになる。

図1_突合点検の具体的項目

縦覧点検

 縦覧点検とは、医療機関から請求された同一患者のレセプトを複数月にわたってコンピュータを用いて紐付けし、点検を行うことである。
 点検は、当月請求されたレセプトについて、コンピュータに蓄積された過去レセプトの請求内容を参照しながら行われる。蓄積して参照するレセプトは、支払基金では最大過去6カ月、国保連合会では12カ月とされている。縦覧点検では、3月に1回を限度として算定できる検査等の診療行為が3月に2回以上算定されていないか、特定の診療行為が過剰に算定されていないか、などがチェックされる(図表2)。

 特に縦覧点検で増加しているのが、初診料を再診料に減点されるケースである。厚生労働省から出されている算定の留意事項通知では、「(13)患者が任意に診療を中止し、1カ月経過した後、再び同一の医療機関において診療を受ける場合には、その診療が同一病名又は同一症状によるものであっても、その際の診療は、初診として取り扱う」(『保険点数便覧』38頁)とある。
 この通知を根拠にして、患者が1カ月受診しない場合はどんな疾患でも初診料を算定している医療機関もあるようだが、通知では「(14) (13)にかかわらず、慢性疾患等明らかに同一の疾病又は負傷であると推定される場合の診療は、初診として取り扱わない」と続いている。この通知を根拠にして、高血圧症、脂質異常症、うつ病、アレルギー性鼻炎などの慢性疾患は、数カ月受診が中断された場合でも、基本的には初診と認められない場合が多い。
 その他、パリエット錠などのPPI製剤の投与について、「胃潰瘍」の場合は8週間(56日)が限度とされているが、1回目30日分、2回目30日分の計60日分処方すると、縦覧点検で4日分減点されてくるので注意が必要だ。

図2_縦覧点検の具体的項目

算定日記載による審査

 電子レセプトによって請求する場合には、2012年4月診療分以降、各項目毎の算定日の記載が義務付けられた。算定項目を時系列で並べて表示できるようになるため、審査側で所見のないカルテを見ることができる状態であるともいえる。算定日情報を利用すると、以前ではチェックできなかった項目についても減点・返戻を行うことが可能となる。

 例えば、患者が複数回受診している月のレセプトで、算定要件で「1日につき」と規定されている消炎鎮痛等処置で「器具による療法」と「湿布処置」を同日に算定していると算定日を特定され、一方が減点されることとなる。
 また、外来管理加算と、同加算が算定できない処置・検査等を同日に実施していると、外来管理加算が減点される。ヘリコバクター・ピロリ感染症の治療において、除菌後判定は「除菌終了後4週間経過後」(『保険点数便覧』369頁)に行うとされているが、4週間経過していないにもかかわらず検査を行っていると査定される場合があるので注意していただきたい。

 審査・指導については、お気軽に協会・審査対策委員会にご相談いただきたい。

(『東京保険医新聞』2016年12月25日号掲載)