【解説】住民税特別徴収制度への対応

公開日 2016年12月25日

東京あきば会計事務所
税理士 奥津 年弘

はじめに

 一年前から「事業主の皆さま 平成29年度から個人住民税の特別徴収を徹底します」というビラが届いています。また2016年9月以降「平成29年度における個人住民税の特別徴収指定について(通知)」などが送られてきています。この問題点と対応を考えてみます。

「特別徴収」とは

 「特別徴収」とは、事業主(会社)が、従業員の住民税を給与から天引きして、区市町村に納付するものです(地方税法321条の3以降)。これに対し「普通徴収」とは従業員の住所地に「課税通知書」および「納付書」が送られて、本人が直接納付するものです。
 「特別徴収」は、これまで中小零細事業者には負担が大きいということで、強制しない運用がなされてきました。しかし、行政事務の軽減化、滞納の防止などの理由から、近年、特別徴収の徹底が図られるようになりました。他県では数年前から強化され、東京都と都内全62区市町村は、2017年度から強化・徹底運用させようとしています。

 A4版のビラには、特別徴収制度のメリットとして「『事業主の方』には『所得税のように、税額の計算や年末調整をする手間がいりません』」、「『従業員の方』には『個人住民税の納め忘れがありません。普通徴収の納期が原則、年4回であるのに対し、特別徴収は年12回であるため、1回あたりの負担が少なくてすみます』」としていますが、デメリットの記載はありません。

従業員にとってのデメリット

(1)納税情報が事業主や事務担当者などに知られる恐れがあります。

(2)退職時に一括で住民税を控除されることがおこなわれます。

(3)事業者の滞納により納税証明が発行されません。

事業者にとってのデメリット

無償で複雑・迅速な事務を求められることです。

そのほか、詳細についてはこちら(会員限定ページ)をご覧ください。

(『東京保険医新聞』2016年12月25日号掲載)