医科歯科連携研究会2016を開催「睡眠時無呼吸症―医科歯科の治療連携を学ぶ」

公開日 2017年01月25日

医科歯科連携研究会2016

 協会・医科歯科連携委員会は12月4日に、東京歯科協会、千葉協会と共催で「医科歯科連携研究会2016」を開催し、医師、歯科医師、コメディカル90人が参加した。
 今回は「睡眠時無呼吸症の治療における医療連携の実際」と題し、成井浩司氏、古畑升氏らを講師を招いた。冒頭はプレ講演も開催し、より実践的な医科歯科連携を学んだ。

当日の演題
プレ講演

「透析患者に対する口腔ケアの取り組み
―当院と鶴田クリニックとの連携報告」

川島 正人 先生
(板橋区、山崎歯科口腔ケアクリニック 院長)
睡眠時無呼吸症の治療における医療連携の実際
東京医科・歯科両協会の連携

山本 鐵雄 先生
(大田区、山本歯科医院/東京歯科保険医協会 副会長)

”医科”の立場から

【医科】成井 浩司 先生
(港区、虎の門病院 睡眠呼吸器科 部長)

”歯科”の立場から

【歯科】古畑 升 先生
(港区、古畑歯科医院/ 古畑いびき睡眠呼吸障害研究所)

パネルディスカッション 座長:佐藤 一樹 先生

虎の門病院の医療連携

 虎の門病院では2004年4月から睡眠センターを開設。現在では、入院による終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査は年間300例超を実施するほか、簡易検査(HST)機器も10台備えており、病状に応じて初診日からすぐに自宅での検査を行うことも可能な体制となっている。

 さらに病診連携にも力をいれており、あらかじめ連携する医療機関からはPSG・HST検査のみの依頼も積極的に受け入れる。実際、他院からの紹介患者のうち、検査のみの患者はPSG検査で年間およそ140件、HST検査で同70件の実績を誇り、かかりつけ医のもとで結果説明と治療方針の検討を受けることができると患者からも好評だという。

「CPAP」か「歯科口腔内装置(OA)」か

 睡眠時無呼吸症の治療における医科歯科連携は、しばしばHSTまたはPSG検査の結果、CPAPが保険適用の対象とならない患者(AHI:無呼吸低呼吸指数20回未満など)、もしくはCPAPを導入したものの、就寝使用時の不和等によりCPAP継続を断念する場合などにOAを検討することが多く見られる。

 しかし成井・古畑両氏からは「軽症例やドロップアウトの患者だけでなく、治療開始時からCPAPとOAの特性を患者に説明し、より患者の生活環境や身体的特徴等を勘案して選択することが望ましい」との訴えがあった。

 実際に虎の門病院では、明らかに下顎が後退している、BMIが低い(太っていない)などの患者は積極的にOAを検討しており、年間およそ400例程度のCPAP導入がある一方で、OA導入もおよそ200例程度となっている。

SASは“Common Disease”であり“全身疾患”

 最後に成井氏は、同病院で睡眠呼吸障害によるCPAP使用患者のうち、初診時の併存疾患を紹介。751例のうち、63.8%が「高血圧」51.1%が「脂質代謝異常」を有していたほか、「高尿酸血症」が24.6%、「糖尿病」が27.7%とつづいた。
「睡眠時無呼吸症候群は合併症も多く、実地医科がしばしば遭遇する重要な疾患である。多くの医療者が意識を持つことで早期発見と適切な治療につなげてほしい」と結んだ。

保険適用とならない「OA患者のフォローアップ検査」

 フロアからの質疑では、「PSGやHST検査について、現行の保険請求上は“睡眠時無呼吸症候群の診断”または“CPAPの経過観察・効果判定として6月に1回”に限り算定できるとされ、OAのフォローアップでは算定できない」と、診療報酬上の不合理を指摘する声が上がった。

 協会では、すでに2018年の診療報酬改定に向けた改善要求の検討を進めている。今回の声も含め国に要求していくとともに、医科歯科連携のさらなる充実を後押ししていく予定だ。

(『東京保険医新聞』2017年1月25日号掲載)