【銀杏並木】季節感の薄らいでいく昨今である

公開日 2017年01月25日

gra_gingkobi

 季節感の薄らいでいく昨今である。以前はクリスマスには「ジングルベル」の曲が巷の商店街に鳴り響いていた。ほろ酔い加減のおじさんが、「ウイー」と千鳥足で赤と緑の模様の包装紙に包まれたクリスマスケーキを持って家路に向かう姿を見かけた。サザエさんの漫画に出てくるあの感じである。

 年末には「お正月」商戦が繰り広げられ、近所の商店街は大賑わいだった。最近の年末風景は少し違う。町がおとなしい。不景気のせいだけだろうか?世の中が何となく白けている。

 最近の若者は「おせち」料理を食べない。従って、世のお母さん方は作らない。昔と違って、今は冷蔵庫があり保存食は必要ない、冷たいものは食べたくない、元日からコンビニ、ファミレスは開いている、などなど理由は色々である。

 町から門松が消えた?例年通り、年末にスーパーで松飾りを買い28日に左右の門柱に付けた。年明けにご近所を歩いてみると、飾っている家はごくわずかである。

 日頃忙しく近所付き合いのない私は、「ゴミが増えるから、『今年は松飾り自粛』などという回覧板が回ったのかしら…」などと思ったが、そうではなさそうである。そういえば、駅前の都市銀行に、かつての大きな門松はなかった。

 年始めに保存食は必要ない、門松にお金をかけるのは無駄、などなど色々な価値観があって良いと思うが、文化は?文化はどうなっちゃうの?

 凧揚げ、羽つき、カルタ取り、すごろく、竹馬など、伝統的な遊びが消えつつある。小学校の校庭や体育館などを利用して、それらの遊びを子ども達に伝えていって欲しいものである。クリスマス商戦がおとなしくなったのは良いことだが、異国のお祭り「ハロウィーン」にあんなにはしゃぐのなら、日本古来の元旦を、宮城道雄の「春の海」のゆったりとした曲を聴きながら、もっと愛でて欲しい。(コケ)

(『東京保険医新聞』2017年1月25日号掲載)

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