保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

2016年度 医科歯科医療安全講習会 止めてはいけない!?ー抗血栓療法の休薬と医科・歯科治療

公開日 2017年03月02日

2017年2月19日に開催した「医科歯科医療安全講習会2016」で登壇された矢坂正弘先生(九州医療センター)のご厚意で、同センターで取りまとめた最新版の『経口抗血栓薬の術前休薬指針(第3版)』がホームページに公開されました。
日常診療でもご活用いただけるようダウンロードも可能です。ご不明な点は協会事務局(担当:杉山)までお問い合わせください。

ダウンロードはこちら【外部のウェブサイトに移動します】

2016年度 医科歯科医療安全講習会

170219_医科歯科医療安全講習会全体

 協会は2月19日、御茶ノ水・連合会館で「医科歯科医療安全講習会」を東京歯科保険医協会と共同で開催した。
 講師は抗血栓療法に関する医科・歯科・法律領域におけるオピニオンリーダー4人を招き、会員医師・歯科医師、研修医、ケアマネジャー、マスコミ記者ら207人が参加した。

170219_講師の先生方

服薬中の患者は900万人超

 超高齢社会を迎え、2015年時点で4人に1人が65歳以上となり、脳卒中の死亡率は第4位(14万人/年)にまで下がったものの、治療薬を服用する患者数は増加の一途だ。
 抗凝固薬は160~200万人、抗血小板薬は700万人にのぼり、抗血栓療法の休薬問題は、実地医科にとって避けては通れないテーマとなっている。

休薬するリスク、休薬しないリスク

 講演では、全国の国立病院機構における抗血栓療法中の観血的処置予定の患者1万例に対する調査研究の概要が紹介された。
 休薬群6,149例と継続群3,551例とを比較すると、「血栓・塞栓症(n=128)」だけでなく、「出血(n=1,144)」、「死亡(n=65)」についても休薬群の方が高いとの結果だ。
 これには高齢の患者が多い、侵襲性の高い手術か否か、ヘパリン代替療法の有無など、調査の結果だけでは判断できない他要因も背景にあるとしつつ、演者らは「多くの実地医科に、休薬の様々なリスクもあわせて知ってほしい」と訴えた。

抜歯、白内障手術等は休薬しない!

 歯科、眼科では抗血栓薬を休薬せずに、「抜歯」や「白内障手術」の実施が認知されてきた。さらに循環器領域でも、ペースメーカー植え込み時の体表小手術など、休薬しないことが一般的となりつつある。
 一方で、侵襲の大きい外科的手術(歯科口腔外科手術)や、機械人工弁置換、心原性脳塞栓症の既往がある等の患者には、リスク等を十分に説明し、休薬も考慮する必要がある。

 重要なのは、他科の医師との間で、それらの認識が十分に共有されていない点だ。
 ある事例では、歯科医師が抜歯に際して医科側に「病状、ワルファリン量、併用薬およびPT‐INR値」を照会したところ、それらの情報とともに休薬指示の返答があったという。

 現在の歯科分野のガイドラインでは、“埋伏歯”等の難しい事例を除いて、PT‐INR値3以下は原則として休薬せずに抜歯が可能である、としている。こうした情報が共有されないことで、医科側で“安易な休薬指示”を行わないよう、今回のような医科歯科でともに学ぶ講習会開催がいっそう求められている。

歯科分野への理解が徐々に広がる

 参加者からは、「この分野における歯科ガイドラインを学び、重要な論点を整理することができた」「今後も歯科からの問い合わせに自信を持って対応できる」など、歯科分野への理解がいっそう深まったとの感想が多く寄せられた。
 一方で、内視鏡検査や消化管手術等を実施する際の連携で苦慮する、との感想があったほか、異なる主治医からそれぞれ抗血栓薬が処方されている際の調整が難しい、など医科同士の連携などに課題があることもわかった。

 脳卒中の新規発症患者は年間30万人、医療機関受診者は年間300万人であり、認知症原因の第2位、寝たきり原因では第1位で、要介護状態に陥る主要因である。このため日常診療では、診療科を問わず“抗血栓薬管理”がますます重要になっている。

 (『東京保険医新聞』2017年3月5日号掲載)