保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【視点】「拙速な標準化」は医療崩壊を招く

公開日 2017年03月02日

―中央医療事故調査等支援団体等連絡協議会発足にあたってー


日本医療法人協会常務理事・医療安全調査部会長
小田原 良治

医療事故調査制度

 医療事故調査制度が2015年10月1日より施行されたが、この制度の基本である検討会とりまとめ、省令、局長通知、厚労省Q&Aのいずれにも、「標準化」の文言はない。むしろ、「疾患や医療機関における医療提供体制の特性・専門性によって異なる」「医療機関の体制・規模等に配慮した再発防止策の検討を行うこと」等々個別事例の特殊性を考慮した表現となっているのである。

 2016年6月24日、制度見直しが行われ、医療法施行規則の一部を改正する省令及び医政局総務課長通知が発出されたが、このなかで「標準」の記載は、ただ1カ所、総務課長通知に「標準的な取扱い」の文節が認められるのみである。即ち、「各支援団体等連絡協議会」は、「医療事故調査等を行う場合」に「参考」とすることができる「標準的な取扱い」について「意見の交換」を行うのであり、「標準化」を行うのではない

 また、「なお書き」で、「病院等の管理者が、医療事故に該当するか否かの判断や医療事故調査等を行うものとする従来の取扱いを変更するものではない」と明記している。各医療機関、事例の個別性を考慮して「管理者」が判断するものであると明記しており、「標準化」とは無縁のことである。「医療事故調査等を行う場合」については、医療法施行規則の(医療事故調査の手法)の項目に明示してある。

 即ち、第1条の10の4の第1項で、医療事故調査を行うに当たっては、必要な範囲内で、選択して、情報の収集及び整理を行うこととしており、同2項及び3項では、「非識別化」が必要なことを明記している。従って、「標準的な取扱い」とは、医療法施行規則第1条の10の4第1項の内容及び第2項・第3項の「非識別化」について、「参考」とすべき取扱いがあれば、それについて「意見の交換」を行うとの意味であり、それ以上のものではない。巷間ささやかれる「標準化」「統一化」など本制度にはない。「標準化」「統一化」の亡霊発言は、法律を逸脱しているというべきであろう。

中央医療事故調査等支援団体等連絡協議会(協議会)とセンターの関係

 協議会発足に至る「発起人会」「WG」では、「センターは協議会のオブザーバー」であることが明確となり、規約上もそのような位置づけになった。
 第2回WGは激論となった。争点は、センターの木村壮介常務理事が、センターは正会員であると強く迫ったのに対し、当方がセンターはオブザーバーしかありえないと主張したことである。改正医療法施行規則では、「医療事故調査等支援団体は、・・・共同で協議会を組織することができるものとすること。」と記載されており、「医療事故調査等支援団体」が協議会を組織するのである。総務課長通知に、「・・・医療事故調査・支援センターが参画すること。」となっているのは、支援センターを正会員外で参画させるという意味と解すべきである。

 文言調整を行い、「中央医療事故調査等支援団体等連絡協議会規約」として決定された規約について、ポイントのみ記しておきたい。

 第1条で、名称を「中央医療事故調査等支援団体等連絡協議会」と「等」が重なる名称となった。これは、正規メンバーである「医療事故調査等支援団体」の協議会に厚労省とセンターが参画するという意味であり、厚労省とセンターは後者の「等」に入る。第4条第2項で、「中央協議会の会議に出席する者は、前項に定める各支援団体が指名する構成員をもって充てる。」とし、第5条で「会長・副会長を第4条第2項に定めるものの互選」とした。即ち、選挙権・被選挙権のないセンターは当然に「オブザーバー」である。第4条3項で「厚労省医療安全推進室及びセンターは協議会に参加する」と規定し、「オブザーバー」の一語を削除したが、文意から厚労省と同様センターは当然に「オブザーバー」である。

 WG議論のなかで、驚くべきことが分かった。センターは主たる業務について理解できていないようである。センター業務は、複数の病院の院内調査報告を収集、情報の整理・分析を行い、医療機関の体制・規模等に配慮した再発防止策を検討するものである。ところが、未だにモデル事業の手法を引きずって、報告例を増やすことと、個別病院への介入を業務と勘違いしているようである。

センターと協議会の動きには注意が必要

 「中央医療事故調査等支援団体等連絡協議会」は2016年12月28日に第1回会議を開催した。その内容は不明であるが、記者会見のm3.comの記事を読めば、表題の「標準化」の危険を感じかねない。日医の今村定臣常任理事は、センターの副理事長でもあるが、どちらの立場での発言か奇異に感ずるところもある。「日医は、・・・できるだけ統一的なやり方でやってもらいたい」との発言は極めて問題であろう。

 医療事故調査制度には、「標準化」「統一化」という趣旨は全く含まれていない。むしろ、個別の対応を求める内容となっている。それにも係わらず、医療現場で「標準化」の懸念が絶えないとすれば、その根源は、本制度の運営をリードすべき人々にあると言わねばならない。「標準化」の亡霊を排除し、医療事故調査制度を軌道に乗せるためには、センターの機構改革が先決であろう

(『東京保険医新聞』2017年3月5日号掲載)

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