保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

政策懇談会『日本再生の処方箋』―櫻井 充議員「社会保障を充実させてこそ」

公開日 2017年03月15日

170227櫻井充議員

 協会・政策調査部は2月27日に参議院議員で医師の櫻井充氏を招き、政策懇談会(国会報告会)を協会セミナールームで開催した。

 櫻井議員は過去に財務副大臣や厚生労働副大臣等も歴任するとともに、議員活動だけでなく、現在も宮城県仙台市の仙塩総合病院・心療内科等で診療している。当日は「日本再生の処方箋」と題して講演し、参加した医師らと意見交換した。

日本経済と日本社会のいま

 櫻井氏は、経済指標のひとつであるGDP(国内総生産)を取り上げ、1997年をピークに日本経済は横ばい、むしろ緩やかに後退していること、特にGDPの6割を占める民間最終消費(≒内需、個人消費)が伸びておらず、その大きな要因として「人口・生産年齢人口の減少」、「低所得者層の増加」、そして「将来不安(特に社会保障について)」の3つを挙げ、これらの改善をなくして経済成長は始まらないとした。

 過去、先進国における経済成長は“人口”に大きく依存してきたが、このままでは男性で10人に1人、女性で5人に1人が生涯未婚となり、出生率の低下に拍車がかかる。就労形態別では、配偶者を有する男性の割合は、正社員で約60%、非正規雇用で約30%、パート・アルバイト等では約16%しかない。最近では、卒業後に奨学金返済に苦慮する若者も増えており、“奨学金破産”などの言葉も聞かれる。

 経済成長を大きく左右する個人消費を伸ばすためには、若者が“結婚できる社会”“子どもが産める社会”を総合的に構築することが重要だとした。

民間保険会社と“メディカル・ロス”

 また、日本の社会保障の不安を煽り、加入者を増やして利益を伸ばそうとする民間保険について言及した。アメリカの保険会社のなかでは、加入者から集めた保険料のうち、実際に加入者に給付した費用を“メディカル・ロス”と呼ぶ。猫やアヒルのCMキャラクターでお馴染みのアメリカ保険会社の場合は、メディカル・ロスは50%(もう半分は企業の利益)、さらには世界の売り上げの3割、利益の7割が日本において得ており、日本は大変“オイシイ市場”なのである。最近では与野党を問わず、医系議員からでさえ「今後は社会保障給付を抑制し、いっそう民間保険の活用を国民に広げるべきだ」との声も聞かれる現状に警鐘を強くならした。

「コンクリートから人へ」の光と影

主な産業別就業者数の推移
医療・福祉の従事者数

 各産業において、生産額の増加に応じてどの程度の雇用が必要かを示す指標に「雇用誘発係数」がある。雇用誘発効果としてしばしば取り上げられる「公共事業」と比べて、医療・介護・社会福祉等の方がはるかに雇用を生み出すことはあまり知られていない。さらに、生産増による所得増、さらに消費増につながる波及効果で見ても、医療・介護・社会福祉分野の“雇用の受け皿”としての評価は高い。

 「コンクリートから人へ」は2009年の衆議院選挙で民主党が掲げた方針の一つである。実際、総務省の「労働力調査年報」で見ると2009年10月から2011年10月では、建設業・製造業の就業者数は減少しているものの、医療・福祉の就業者は大幅に増加した。建設業・製造業の平均年収は350~450万円ともいわれているが、この間の診療報酬、介護報酬は国の方針で度重なるマイナス改定もあり、医療・福祉分野の平均年収はそれよりも100万円近く低い。櫻井氏は、雇用の確保と賃金の引き上げが、経済成長を促すことを指摘し、「基本的な方針は間違っていなかった」との見解を示した。

 現政権は「多様な働き方」をキャッチフレーズにして、大企業の目先の利益を優先した非正規労働等の拡大を推進してきた。これは国民の生活と国の経済成長の両者を大きく損なっていると断じた。

社会保障の充実が経済を良くする

 最後に櫻井氏が重ねて強調したのが社会保障の充実についてだ。現政権は「経済を良くすれば国民の生活や社会保障が良くなる」というが、むしろ逆である。国民生活や社会保障をよくしなければ経済は改善しない。さらには、社会保障における国民負担の議論は避けては通れないものの、教育や子育てなど他分野の国民負担の軽減とあわせて議論しなければならないこと、そして生産年齢人口の雇用形態を非正規から正規雇用に戻していく政策、最低賃金など所得の引き上げ等を引き続き求めていかなければならない、と結んだ。

(『東京保険医新聞』2017年3月15日号掲載)