【銀杏並木】「テロ等準備罪(共謀罪)法案はまさに現代の治安維持法だ」

公開日 2017年03月25日

銀杏並木

 テロ等準備罪(共謀罪)創設法案が現在、国会予算委員会などで審議され、政府は閣議決定を急いでいる。

 共謀罪とは、犯罪計画を2人以上で合意しただけで罪になるというものである。過去3回廃案とされてきたが、政府はオリンピックのテロ対策に必要だという新しい理由をつけ、再提出を図っている。これに対して法曹界他をはじめ各界から大きな反対の声が上がっているが、政府は名称をテロ等準備罪と変更し、その対象犯罪も600以上あったものを277に絞り、また要件に準備行為を加え、批判をかわそうとしている。

 しかし、その本質は変わってはいない。政府は一般の市民や組織は対象ではないと強調するが、条文からはその根拠は読み取れない。それどころか2月末提示の条文にはテロ対策のはずなのにテロの文字はなく、実は一般人を対象にしていることがうかがえる。

 共謀罪は犯罪の形が整う前の段階でなされる合意を対象とするため、その捜査手法もかわってくる。怪しいとにらんだ対象者は盗聴等を通じて常に監視し、合意をしたと当局が判断した時点で、逮捕や家宅捜索などに移行する。何をもって合意と判断するかは当局の恣意に委ねられるため、私たち国民は常に自分の言動に注意を払わねばならなくなる。

 さて、これと同じ威力を持つ法律が戦前にあったのをご存知だろうか。治安維持法である。同法も政府は当初「国体を変革する者」が対象で、一般人を想定したものではないと明言していたが、次第に対象が広がり、最終的には文化サークルの類まで取り締まられた。

 これら2法に共通する最も危険な要素は、何が犯罪になるかを決めるのが捜査当局であることである。戦前、政府は治安維持法を駆使し戦争反対の声を封じ込めていった。

 今、政府は共謀罪創設で一体何を狙っているのだろうか?ここ数年、集団的自衛権の解釈変更、秘密保護法、安保法制の制定ときて、憲法改悪もちらつく流れのなかで共謀罪創設を考えるとぞっとするのは私だけだろうか。(銀狸)

(『東京保険医新聞』2017年3月25日号掲載)

関連ワード