保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】混合介護を考える

公開日 2017年03月28日

 2月10日に開かれた内閣府の国家戦略特区の区域会議において、小池百合子都知事は「混合介護」を2018年度からモデル事業として豊島区でスタートさせることを政府に提案した。

 提案の2本柱は、(1)介護保険サービスと保険外サービスの同時・一体的提供と、(2)介護保険サービスに付加価値をつけた部分への上乗せ料金設定だ。(1)では、訪問介護の際に、利用者の分と家族の分の調理・洗濯などを同時に行うことを可能にするとした。従来は保険サービスと保険外サービスが明確に区分され、「同時一体的」に行うと介護報酬の請求ができなかった規制の撤廃を求めている。(2)では、健康づくりに資する資格・技能や、外国語を話せる等の技能を有するヘルパーを指名した場合の指定料、繁忙期の上乗せ料金、閑散期の割引料金などの設定を可能にするとしている。提案理由として、「利用者・家族のニーズに応える」、「介護従事者の待遇改善につなげる」などと美辞麗句を並べているが、公的介護給付の抑制と利用者負担増が相次いで強行されるなかでの、規制緩和だという点を見逃してはならない。

 2017年8月からは高額介護サービス費の上限額引き上げが予定されるほか、今次通常国会では、2018年8月から現役所得並みの介護保険利用者負担を、2割から3割に引き上げる介護保険法改悪案が審議されている。政府は今後、介護保険利用料を原則2割負担化すること、軽度者(要介護1・2)の介護保険給付を地域支援事業(総合事業)へ移行すること、福祉用具貸与と生活援助サービスを自己負担化することなども検討しており、公的介護の解体を着々と進めている。

 2015年8月からは、合計所得金額160万円以上(年金収入のみの場合280万円以上)の介護保険利用者の自己負担が2割に引き上げられているが、利用者からは「年金収入だけではサービスを利用できなくなった。貯金を取り崩している」「デイサービスの利用を減らさざるを得なくなった」など、悲痛な声が挙がっている。現状でも、経済的理由で必要なサービスの利用を断念する利用者が数多く存在している。自費サービスや付加価値サービスの上乗せ料金を支払える利用者がどれだけいるのだろうか。給付抑制、利用者負担増を利用者・家族に課しながら、「同時一体的」に上乗せ料金メニューを提案する狙いは、公的介護給付の抑制ではないか。

 介護従事者の待遇改善については、政府は月額平均1万円相当の処遇改善を実施するため、4月に臨時の介護報酬改定(1.14%引き上げ)を行う。一方、2017年度東京都予算では介護従事者の処遇改善には手がつけられていない。保育士等のキャリアアップ補助には224億円が計上され、従来分と合わせて4万4,000円相当の処遇改善がはかられるのとは対照的だ。「混合介護」によって、事業者を自費サービスと、付加価値サービスの提供に奔走させるのではなく、行政として有効な処遇改善策が望まれる。

 「安心して介護保険サービスを利用できるようにして欲しい」、「誇りを持って働ける賃金保障を」―これは多くの利用者と介護従事者の願いである。政府は介護保険制度の改悪と利用者負担増を撤回し、公的介護保険こそ拡充すべきだ。

(『東京保険医新聞』2017年3月25日号掲載)