持区における株式会社の病院 経営参入の一部解禁について

公開日 2003年04月25日

構造改革特別区域計画として、地方自治体などから申請された57件が「第1弾」認定分として決定されるなど、特区構想による地域からの「構造改革」が進められている。病院経営への株式会社の参入についても、小泉内閣は保険の効かない自由診療のみ解禁することを決め、そのために6月中にも医療法改正をまとめようとしている。

今回の自由診療のみ解禁の政府方針につきひと安心と見るか、国民皆保険制度解体の第一歩と見るか問題のあるところだが、様々な規制によりがんじがらめになっている現在の医療・介護・福祉現場にとって、規制改革の必要性は身にしみて感じていることは異論のないところだろう。

一方、私たち医師・医療機関に対しての一般国民の枇判には真撃に耳を傾けねばならず、私たち医師・医療機関に求められている自己改革の課題は数多くある。政府厚生労働省の方針に堂々と異議を唱えるとともに、自らの問題点も克服出来るよう努力すべきことはいうまでもないが、それにしても、現下の医療改革は、経済優先・効率優先の市場競争原理の導入に偏りすぎ、国民の基本的人権を犠牲にして推し進められようとしている事に危惧を覚えざるをえない。

政府・財界は経済活性化を急ぐあまり、本来であれば日本国中で改革改善せねばならぬものをないがしろにしつつ、国民の合意形成を軽視し特区に何もかも入れ込もうとしている。これでは地域格差・貧富の格差・年齢格差の一面的導入に道を開きかねず、このような特区構想の進め方には賛成することはできない。

東京から発信して日本を変えるというのは、こうした政策を日本に広めるために自分がその先導役を担いたいということなのでしょうか。とてもそういう危険な人に政治をまかせるわけには行きません。

そもそも医療の規制改革は、利用者本位の医療を、近代化、効率化によって実現するというものであった。しかし、株式会社の病院経営への参入が、利用者である国民本位の医療を提供するだろうか。これは国民懐保険制度の根幹に係わる問題である。

株主への利益配当教その基本的目標とし、利益追求をせぬばならない株式会社が医療に参入すれば、医療現場に収益性の高い分野への集中と不採算分野の切り捨てが持ち込まれ、貧富の格差によって国民の受療権が脅かされることとなる。しかし、医師は医療を誠心誠意行う義務を患者に対して負っており、また応召義務から、患者の選り好みをすることは出来ない。その意味からも医療機関は非営利性が弊求されているのだ。株式会社(営利企業)の至上命題である利潤追求と、医師に求められるこのような義務とは両立することはできない。

現実の医療機関の様々な矛盾や問題点を取り上げて、「経営手法の改善につながる」「資金調達の多様性に道を開く」など、株式会社参入肯定論者がいろいろ論じているが、それらの解決は現行国民皆保険制度を守りつつ改善して行くべき課題であり、現在の診療報酬制度・医療保険制度に内在する様々な矛盾・問題点に目をつむり、医療保険制度の財源問題のみ重視し、まず、特区から医療への株式会社参入を認め、更に自由診療導入を挺子に混合診療に道を開こうとする今回の政府の対応は、逃げと安易の方策である。

特区での自由診療のみとはいえ、今回、株式会社の医療への参入が認められたことは、今後の国民皆保険制度の解体へ道を開くことに繋がるものとして、東京保険医協会としては容認できぬものであることを重ねて強調したい。

東京保険医新聞2003年4月25日号より