小児初期救急医療の現状と改善策

公開日 2003年06月15日

少子化、核家族化等が進行している影響で育児不安が増えている。そして、女性の社会進出に伴い準夜間、休日における小児医療への要望が高まっている。一方で、小児科医や小児科を標傍する医療機関が実質的に減少する傾向で、小児の初期救急医療需要に対応できない状況にある。小児救急医療の充実・強化は関係者が協力して取り組むべき緊急の課題となっている。

小児科を開業している医師から「閉院間際に保育園児をつれた母親に来院され、次の会合をキャンセルしなければならなかった」「休日に電話による受診の可否についての問い合わせが多くなった」などの話をよく耳にする。区市町村へも、準夜間帯や土、日に診療する医療機関の紹介を依頼する電話が後を絶たないと言われている。時間外小児医療に対する要求は非常に高い。

小児科医とその医療機関が増えない最大の原因は小児医療の診療報酬が低いことにある。人手や手間がかかる割には薬剤の量や検査が少なく不採算性が高い。多くの病院が小児科の廃止に追い込まれた。数年前、採算をあげようとした都内のある病院の小児科医は2倍、3倍と診療せざるを得なく、その結果過労死に追い込まれている。

従って、小児科医とその医療機関を増やすには診療報酬を抜本的に改善する必要がある。

こうした状況にもかかわらず、個々の小児科医は多くの犠牲を払いながら「採算より使命」と日々、診療に励んでいる。また、開業小児科医が協力して東京都や地元自治体の支援を取り付け、地区医師会単位で「準夜間小児初期救急クリニック」を開設し、輪番で対応している。2000年に葛飾区医師会で始められ、現在では8自治体、9カ所で実施されている。インフルエンザが流行したこの冬、練馬区役所内にある「区夜間救急こどもクリニック」は罹患した子供と親が続々と訪れた。母親の評判は「必ず小児科医がいるから安心」と輪番で診療している地元小児科開業医の献身性が評価されている。しかし、小児科医の不足や、自治体からの支援が不十分なため全都的に広がるには時間がかかりそうだ。

都も不十分ながら区市町村が行う小児救急医療事業に対する支援事業や、小児に多い救急疾患に対する基本的知識と手技について研修を行う「開業医小児医療研修事業」を行っている。両制度とも多くの開業医が活用できるよう一層の充実を求める必要がある。

協会は小児医療診療報酬の引き上げを要求するとともに、地域の小児科医の状況を踏まえ、都の支援事業の改善を要求しつつ活用、基礎自治体にも支援を求め、小児初期救急医療供給体制の整備に努力することにしている。

東京保険医新聞2003年6月15日号より