政官財の癒着に拍車をかける日本経団連の献金再開

公開日 2003年11月05日

日本経団連は、9月25日、「『優先政策事項』と『政策評価に基づく企業の政治寄付の意義』について」という意見書を発表、93年に廃止した政党への政治献金あっせんを事実上再開する方針を決めた。

献金再開に当たって日本経団連は、自民党1極集中ではなく、民主党にも配分し、2大政党制を目指す方向で検討を進めていると伝えられている。総選挙を前に、民主党は自由党と合体して、財界の支持を取り付けようとしているが、これでは、政府与党をはじめ民主党まで、政官財の癒着構造にどっぷり漬かってしまうことになりかねない。

かつては、旧経団連が業界団体別に、さらに業界団体が企業に献金額を割り当てていた。新方式は、日本経団連に設置する「政経行動委員会」が各党の政策を評価し、これに基づいて企業に献金額の目安を提示し、採用するかどうかは個々の企業に任せるというものである。「優先政策事項」には10項目にわたり、法人税率の引き下げ、社会保険料負担の軽減、消費税の引き上げ、医療・福祉分野への株式会社参入が掲げられている。

日本経団連が政党の政策を評価し、その意向に沿う政策を掲げる政党・政治家を支援していくという方針は、今年1月に出された「活力と魅力溢れる日本をめざして」(いわゆる「奥田ビジョン」)でも触れられており、今回出された優先政策事項は、同ビジョンを受けて、支援する政党・政治家の基準を提示したものである。つまり財界の提唱する新自由主義的改革、すなわち、株式会社の医療経営参入要求などにみられるように、あらゆる分野での規制緩和を進め、自由競争と市場原理を聖域なく推進することに賛同する政党・政治家を支援していくということである。

企業による政治献金が廃止されてから、財界は、提言・意見書、各種審議会への委員派遣という形で財界の意向を政治に反映させてきた。今回はそれに加えて、財界の意向に沿う政策を掲げる政党に資金援助をするという、より直接的に「政治を金で買う」仕組みを明確にしたものである。

民主党の菅直人代表は、7月16日の日本経団連との懇談で「(どの政党に献金するかの)基準に政策実現の実績だけでなく、政治改革への取り組みも入れて欲しい」と申し入れ、財界の意向を政策に盛り込むことを表明した。今回の総選挙用に発表された民主党のマニフェストでは、基礎年金の財源に消費税を充てることなどが盛り込まれており、経団連の奥田会長が「消費税を基礎年金の財源に充てるとした点には賛同する」(10月6日)と述べているように、社会保障の財源を消費税率の引き上げによって賄い、それとひきかえに大企業の法人税や社会保険料負担の大幅な軽減を図りたい財界にとっては、歓迎すべき内容となっている。

今回の総選挙は、マスコミでは自民党VS民主党という対決構図が描かれているが、財界の意向を推進するという点では自民党も民主党も同じである。両党とも社会保険料などの企業の社会保障負担の縮小を推進する勢力であることには変わりがない。今回の「10項目」は自民・民主いずれが政権を担当したとしても新自由主義改革を推進できる体制を整えるべく、政党への資金提供の基準を設定したということであろう。しかし財界の意向は国民の意向とは正反対のものである。協会が行ったアンケート調査でも、医療や福祉などの社会保障に予算を使うべきだとの意見が7割にのぼり、社会保障の充実は国民の切なる願いである。資金提供を受けたいがために財界の意向に沿う政策を掲げるなどは、国民の声を無視するものだ。財界による政党への資金提供は、財界の言いなりになる2大政党に国政の運営を委ねようとするものであり、極めて危険なものといわざるを得ない。

東京保険医新聞2003年11月5日号より