生活保護受給者の医療要否意見書 13区4市で医療機関が負担

公開日 2017年04月17日

郵送費の負担軽減を

 生活保護の受給者が増加している。特に医療扶助は2012年度の11万4千223人から2014年度は23万6千861人と2倍を超えた(『東京都の福祉・衛生統計年報』)。
 このような中で生活保護指定の医療機関は、医療扶助受給者ごとに「医療要否意見書」を無料で作成し、医療扶助給付が円滑に進められるように協力しているが、13区4市の医療機関では、福祉事務所への提出時に返信用封筒や郵送料の「持ち出し」での負担が生じていることが協会の調査で明らかになった(表1)。

表1_都内区市町村における生活保護「医療要否意見書」の取扱い
郵送料など医療機関負担の有無(東京保険医協会調べ 2016年8月末時点)
  区内 区外   市内 市外
千代田区 なし※1 なし※1 八王子市 なし なし
中央区 なし なし 立川市 なし なし
港区 あり あり 武蔵野市 なし※2 なし※2
新宿区 なし※2 あり 三鷹市 なし なし
文京区 なし なし 青梅市 なし なし
台東区 一部あり※3 あり 府中市 なし なし
墨田区 あり あり 昭島市 なし なし
江東区 なし なし 調布市 なし なし
品川区 一部あり※4 あり 町田市 なし なし
目黒区 なし なし 小金井市 なし なし
大田区 あり あり 小平市 あり※7 あり※7
世田谷区 なし なし 日野市 なし なし
渋谷区 あり あり 東村山市 あり あり
中野区 なし あり 国分寺市 なし なし
杉並区 なし なし 国立市 なし なし
豊島区 なし※5 なし※5 福生市 なし なし
北区 なし※5 あり 狛江市 なし なし
荒川区 あり あり 東大和市 なし あり※8
板橋区 あり あり 清瀬市 なし※9 なし※9
練馬区 なし なし 東久留米市 なし※2 なし※2
足立区 あり あり 武蔵村山市 なし なし
葛飾区 一部あり※6 一部あり※6 多摩市 なし なし
江戸川区 なし なし 稲城市 あり あり
本表は2016年7月末から8月末にかけて各自治体に電話による聞き取り調査を行ったもの。その後に取り扱いが変更されている場合もある。 羽村市 なし なし
あきる野市 なし なし
西東京市 なし なし
瑞穂町 なし※10 なし※10
日の出町
檜原村
奥多摩町
※1:診療所(医科)については、区内・区外に関わらず返信用封筒を同封(千代田区)
※2:件数が多い一部の大病院については、返信用封筒の同封を割愛することもある(新宿区、武蔵野市、東久留米市)
※3:月3回、指定医療機関に関連書類を一斉発送する際に、一定枚数の返信用封筒を同封(台東区)
※4:年に1回、区内の指定医療機関(病院・診療所とも)に12枚の返信用封筒を一括発送(品川区)
※5:今年度から返信用封筒を同封するようになった(豊島区、北区)
※6:依頼時には同封していないが、希望が寄せられた場合は返信用封筒を送付している(葛飾区)
※7:初回依頼時には同封していないが、追加で書類のやり取りを要する際には同封(小平市)
※8:市外の医療機関に依頼する際は、希望が寄せられた場合に返信用封筒を送付(東大和市)
※9:昨年4月頃から返信用封筒を同封するようになった(清瀬市)
※10:医療要否意見書等の実務は「東京都西多摩福祉事務所」で担当(瑞穂町、日の出町、檜原村、奥多摩町)
表2_生活保護率30‰超の特別区

 特徴的なのは、生活保護受給者を区の人口で除した「保護率」が30 ‰を超える8区に「医療機関の負担」が集中していることだ(表2)。
 これについてA区の担当者は「他県並みの受給者を抱えており、郵送費用を福祉事務所が負担するのは厳しい」と述べ、財政難を理由にあげている。
 「証明書の交付」は、生活保護法に基づく「指定医療機関医療担当規定」の第7条で「指定医療機関は、その診療中の患者及び保護の実施機関から生活保護法による保護につき、必要な証明書又は意見書等の交付を求められたときは、無償でこれを交付しなければならない」としている。しかし、これはあくまでも書類の作成費用であって、その送付費用を含むものではない。

 医療機関で作成・保存を必要とする文書が増加する一方、日常診療のなかで書類作成に要する時間を確保するのも事務的な負担になっており、医療要否意見書作成に係わる文書料さえ医療機関で徴収できない現状では、郵送料まで医療機関が負担するのは不合理といわざるを得ない。
 協会は2013年に「要否意見書提出時の返信用封筒、郵送費に関する要望」をすでに都に提出しているが、区市町村の負担軽減のためにも、郵送料等の費用は福祉事務所が負担できるように東京都の支援を改めて求めていく。

医療要否意見書
東京都の要否意見書

(『東京保険医新聞』2016年9月15日号掲載)