保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【視点】バリアフリー化の推進を

公開日 2017年04月21日

協会理事  細田 悟

髄損傷で車いす移動となっている友人から

「今最もバリアフリーが進んでいる場所はどこかわかりますか?」

と問われた。「うーん、デパートかな?」

正解は「車道」でした。

 高速道路を含めて日本中に道路網が整備され、自動車に乗りさえすれば、全国どこへでも行け、健常者とほとんど変わらない環境となる。しかし、自動車に乗るまでの障壁(バリア)が問題だ。下肢障がい者は、運転免許を取得する時、近くの教習所で運転免許がとれない(ほとんどの教習所では障がい者用の改造車を用意していない)。

 これまでは、受講する当事者が自分で改造車を持ち込むことが原則となっていたため、まだ免許もないのに自動車を購入し、さらに数百万かけて改造もしなければならない。また、改造車は、中古車市場では汎用性が無いため、取引価格がゼロ円=値がつかない。

 しかし、それらの移動格差解消が、技術革新により可能となった。安価なハンドコントローラーが開発され、普通自動車を全く改造せずにアクセルとブレーキをねじで固定するだけで下肢障がい者が問題なく運転できる道具である。国内では「ニコ・ドライブ」をはじめ5社が発売中だ。

 「よし、それなら、そのハンドコントローラーを日本全国の自動車教習所に普及させれば、車いすの人でも健常者とほぼ同じ条件(費用)で運転免許が取得できるようになるね」ということで、その友人を巻き込んで、2016年3月から国会でのロビー活動をはじめた。メディアにも発信し、2016年7月21日のNHK総合ニュースウオッチ9で「下肢障がい者の移動格差の問題」が取り上げられた。そして2016年10月28日、衆議院内閣委員会で池内さおり委員からの質問に対し、警察庁交通局長から「身体障害者用の車両だけではなく、取り付け部品についても使用できることを通達上に明示をし、教習所に整備を促すよう指示する」という答弁を引き出した(詳細は、ネット上から2016年10月28日衆議院内閣委員会質疑・2時間5分後~2時間15分で視聴可)。

 次の目標は、2020年東京オリンピックまでに下肢障がい者がレンタカーを利用できるようにすること。教習所と同じ理由で、現在、国内で下肢障がい者はレンタカーを利用することができない(アメリカでは、2008年に法律で下肢障がい者でもレンタカーを利用できるように整備されている)。

 全国のレンタカー営業所にハンドコントローラーを整備すれば、ほとんど費用がかからずに実現できる。2020年東京パラリンピックに、車いすの選手が約5千人来日する。彼らが、競技に参加するだけでなく、日本の文化に触れる旅行ができるように準備したい。

 障がい者雇用促進法により、障がい者の雇用枠は広がっている。しかし私の患者にもいたが、職場まで通勤するのが大変で、せっかく就職が決まったのにあきらめてしまうケースも多い。都市部では駐車場を確保できないため自動車通勤を断る企業も多い。

 しかし、今流行しているカーシェアリングが、ハンドコントローラーにより健常者と同様に利用可能となるので、通勤の選択肢が増える。現在、日本国内の身体障がい者の就労人口は、23万人。移動格差の問題が改善すれば、もっと身体障がい者の就労は増加すると考えられる。

 最近、駅のホームや電車のアナウンスで心地よいと感じることがある。「声かけ・サポート」運動。視力障がい者のホーム転落事故が相次いだのがきっかけとなり、JR東日本と首都圏鉄道事業者が取り組んでいる。

 館内放送や車内放送は、下手をすると不快な雑音にもなりかねず、扱いが難しいのだが、このキャンペーンではあえて「障がい者」という言葉を使わずに「困っている人」がいたら声をかけてあげましょうと呼びかけている。

 障がい者でも常に困っている訳ではなく、そっとしておいてほしい時もある。誰でも困っていたら助けてほしい、それが社会の姿と思う。

(『東京保険医新聞』2017年4月15日号掲載)