保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

中央講習会「死体検案業務の実際~3,145例から学ぶ~」

公開日 2017年05月08日

170412_中央講習会「死体検案の実際」

「検案対象となる死亡のほとんどは、適切な降圧治療と入浴時の湯温調節、自殺の予防で解消できる」

講演を聴講して
新宿支部  須田 昭夫

 協会研究部が主催した「死体検案業務の実際」の講演会が開かれた。講師は青梅市の野本医院・野本正嗣院長。地域の死体検案業務を支える中から、2008~2016年の9年間の3,145例という、豊富な症例についてお話を伺った。死体検案は、死亡者の死を遺族が受け入れるためにも、重要な意味を持っているということであった。

 まず基礎知識として、死斑、硬直、直腸温、結膜下出血の意味が語られた。死斑は死後6~8時間は指圧で退色し、4~5時間以内なら、体位を変えることによって転移、死体硬直は48時間で解消、直腸温は1時間で0.5~1度低下する、ということであった。
 3,145例の内訳は、急性大動脈解離が33.8%にも及び、脳出血とクモ膜下出血が合わせて29.2%で、結局65%は後頭穿刺または心嚢穿刺で診断できるという。死体検案における、穿刺の重要性を認識できた。入浴中の死亡は、湯温41度以上での血圧上昇によるものと考えられ、浴槽での溺死は1例も経験していないというお話は、驚きであった。社会状況のためか、自殺が15.9%もあったが、これは周囲の状況からすぐに判断できるようだ。

 急性心筋梗塞と急性心不全という、心臓死は合計でも6~7%しかなかったというのは、予想外であった。診断に苦慮する場合は、AI(オートプシー・イメージング)が有用であるというが、遺族の負担になる。

 死体検案が必要になる死亡のほとんどは、適切な降圧治療と入浴時の湯温調節、そして自殺の予防で解消できるということは、高齢化社会に対する貴重な処方箋と受け取られた。たくさんの参加者が講師をとりまき、講演への感謝と満足の言葉と、質問があふれた。

 なお、この発表は、ある種のセレクションが働いた集団についてであることを付け加えておきたい。

(『東京保険医新聞』2017年4月25日号掲載)