公害環境部―磯子火力発電所を視察 石炭火力発電の課題を学ぶ

公開日 2017年05月25日

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発電所前にて
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分解点検中の第二タービン

  日本では福島原発事故後から石炭火力発電への依存度が増し、40以上の石炭火力発電所の新設が計画されるなど、CO2の排出削減に向けた世界の流れに逆行する動きが目立つ。そこで協会公害環境対策部は、石炭火力の課題と現状、環境対策について学ぶため4月22日、横浜市・磯子火力発電所(Jパワー/電源開発㈱)を視察した。当日は、エネルギー問題に詳しい歌川学氏(産業技術総合研究所主任研究員)、元火力発電所勤務の小林悦治氏、有坂直幸氏らが同行、現地説明を踏まえて学習会を行った。

最新施設でもCO2は天然ガスの約2倍

 磯子火力発電所は1965年建設、2000年代に出力を120万kWに倍増する新1・2号機へと転換した「最新」といわれる施設だ。視察では現地ガイドとともに構内を回り、全国的に厳しいとされる横浜市と公害防止協定を締結していることや、国内初の乾式脱硫装置設置、緑化への配慮などについて説明を受けながら、発電機や運転センター、電気式集塵装置などを見学。この日は定期点検と数年に一度の分解点検が重なり、1号機は発電開始作業、2号機はタービン部品がすべて分解されている状態を見ることができた。

 石炭火発は、同じエネルギー量でも天然ガスの1.8倍、化石燃料で最もCO2を排出する。視察後の学習会で、歌川氏は「石炭火発は発電効力、CO2排出削減能力とも、LNGを上回ることはできない。CO2を固めて地中で保存する炭素固定貯留技術(CCS)が仮に完成しても、天然ガス(LNG)よりコストが高くなる」と指摘。最近は再生可能エネルギーの発電コストが右肩下がりであることから、いずれ再エネが石炭火力のコストを下回ることも予測されているという。

 さらに、途上国の環境対策法令が不十分なため、日本国内で運用している高度な環境対策設備のない発電所を、日本が輸出し続けている点についても疑問を投げかけた。
化石燃料からの脱却は世界の流れ

 化石燃料会社からの投資撤退運動(ダイベストメント)も起き、再生可能エネルギー主体の気候変動政策を打ち出す国も増えている。特に脱石炭の動きが加速しており、フランス、イギリス、カナダなどが2020年代のうちに石炭火発を撤廃する方針を掲げ、本年4月にはイギリスで産業革命以来初めて24時間石炭火力発電ゼロを記録した。日本でも今年に入って、関西電力が2つの石炭火発について、温暖化対策を理由に建設を断念するなどの動きも出ている。

 世界はエネルギー政策転換の只中にある。再生可能エネルギーを主体とする社会の実現を目指して、様々な可能性からエネルギーの未来を考えることが求められている。

(『東京保険医新聞』2017年5月25日号掲載)