公開日 2017年06月07日
2012年から2013年の大規模な風しん流行を受け、東京都と都内区市町村は「成人への風しん予防接種(MRワクチンを含む)費用の助成」を導入した。しかし、東京都では2013年9月末で「成人男性」に対する自治体への財政支援を打ち切ったため、その後、多くの自治体では、主に「妊娠を予定・希望する成人女性(19歳以上)」への助成のみ継続していた。
一方で、昨年度時点では11区が独自に「成人男性(配偶者、同居家族、パートナーなど)」について、個々に対象者を定めて接種費用の助成を継続していたが、さらに渋谷区が2017年度から「成人男性」への助成を再開したことが協会の聞き取り調査で判明した(下表)。
女性 | 男性 | 女性 | 男性 | ||
千代田区 | ● | ー | 八王子市 | ● | ー |
中央区 | ● | ● | 立川市 | ○ | ー |
港区 | ○ | ー | 武蔵野市 | ○ | ー |
新宿区 | ○ | ○ | 三鷹市 | ○ | ー |
文京区 | ● | ● | 青梅市 | ○ | ー |
台東区 | ● | ー | 府中市 | ○ | ー |
墨田区 | ● | ● | 昭島市 | ● | ー |
江東区 | ● | ー | 調布市 | ○ | ー |
品川区 | ● | ● | 町田市 | ○ | ー |
目黒区 | ● | ● | 小金井市 | ○ | ー |
大田区 | ● | ー | 小平市 | ○ | ー |
世田谷区 | ○ | ー | 日野市 | ● | ー |
渋谷区 (男性への支援復活) |
● | ● | 東村山市 | ○ | ー |
国分寺市 | ○ | ー | |||
国立市 | ○ | ー | |||
中野区 | ○ | ○ | 福生市 | ○ | ー |
杉並区 | ● | ○ | 狛江市 | ○ | ー |
豊島区 | ● | ● | 東大和市 | ● | ー |
北区 | ● | ー | 清瀬市 | ○ | ー |
荒川区 | ● | ● | 東久留米市 | ○ | ー |
板橋区 | ● | ー | 武蔵村山市 | ● | ー |
練馬区 | ● | ● | 多摩市 | ● | ー |
足立区 | ○ | ー | 稲城市 | ○ | ー |
葛飾区 | ○ | ー | 羽村市 | ○ | ー |
江戸川区 | ○ | ー | あきる野市 | ○ | ー |
●:該当者は全額公費で助成(無料) ○:該当者は一部費用を助成 ー:助成なし |
西東京市 | ○ | ー | ||
瑞穂町 | ○ | ー | |||
日の出町 | ● | ー | |||
檜原村 | ● | ー | |||
奥多摩町 | ● | ー |
渋谷区の「成人男性」への助成対象は、19~49歳で妊娠を希望する女性と“同居する配偶者”、または風しんの抗体価が低い妊娠女性と“同居する配偶者”となっており、いずれも“配偶者自身の風しん抗体価が低いこと”が要件となっている。該当する場合は全額公費により自己負担なく接種することができる。
過去の風しん・麻しんの流行から、協会ではかねてより「20~40代の成人男女」に必要なワクチン接種が行えるよう、東京都および区市町村に対して要望してきた。抗体検査による対象者の峻別は、例えば会社に勤めている場合などは医療機関への2回の来院(抗体検査および後日のワクチン接種)すら困難な場合も多く、接種率向上の妨げにもなることから不要ではないかとの意見も少なくない。
この間の麻しん流行とワクチン供給の混乱を考えると、MRワクチンの生産・流通体制を充実させるとともに、海外からの渡航者が大幅に増加する2020年の東京オリンピック・パラリンピックも視野にいれて、国内の対策を充実することが早急に求められる。
★渋谷区の麻しん・風しん予防接種の費用 全額助成制度(2017年度)
〔対象〕
渋谷区に住民登録があり、風しん抗体価が低い(HI法で16倍以下またはEIA-IgG価8.0未満)ことが明らかで、次のいずれかに該当する人
1.19~49歳で妊娠を希望する女性または同居の配偶者
2.風しん抗体価が低いことが明らかな妊婦と同居の配偶者
〔助成額〕
全額(無料)
(注)MR(麻しん・風しん)混合ワクチンまたは風しん単独ワクチン、いずれかを1回
(『東京保険医新聞』2017年6月5日号掲載)