【主張】東京都議会議員選挙に望む「暮らしと医療・介護を大切にする都政を」

公開日 2017年06月16日

東京都議会議員選挙が6月23日に告示され、7月2日に投開票される。5月末に実施された共同通信社の世論調査では、新たな都議に取り組んで欲しい政策として、1~4位には「福祉・子育て支援」36%、「雇用・景気対策」15%、「豊洲市場の移転問題」14%、「東京五輪・パラリンピックの準備」7%などが並んだ。豊洲や五輪経費問題をマスコミが大きく取り上げるなかで、都民は、日々の暮らしを支える福祉政策や雇用対策の充実を一番に求めている。

東京都の2016年度「都民の生活実態と意識」基礎調査では、世帯の年間収入は、約半数の世帯(52.7%)は500万円未満となっており、300万円未満の世帯が約3割(29.3%)に達している。国が社会保障費の削減と、患者負担増を進めるなかで、貧困と格差は拡大傾向にあり、「安心して医療・介護にかかりたい」という都民の希望は切実さを増している。その願いに都議会は応えてきたのだろうか。

2017年度東京都予算では、社会保障分野で前進が見られたものの、幹線道路建設や都市再整備などの大型開発路線を推進・継承している。また、2020年五輪経費は都が6,000億円を負担する方針が決定し、都民負担がさらに増える可能性もある。大型開発路線を見直すことによって、高すぎる国保料の軽減や給付型奨学金制度の拡充など、福祉・暮らしを充実させる施策は実現できる。

暗礁に乗り上げている「豊洲市場への移転」については、石原慎太郎、猪瀬直樹、舛添要一の歴代3知事が強く推進し、都議会の多くの会派が移転政策を追認してきた。都は、豊洲市場予定地の土壌汚染対策として、「無害化された安全な状態での開場」と、東京ガスによる操業由来の汚染をすべて除去、浄化し、地下水も環境基準以下にすることを都民と都議会に約束してきた。

小池都知事は6月1日の都議会所信表明で、「860億円もの土壌汚染対策を施しながら、いまだに約束を守れていない」と述べ、土壌の有害物質を環境基準以下に抑える「無害化」が達成できていないことを「都知事としておわびする」と謝罪した。

都民の血税を大量に投入しながら、移転計画は破綻した。都議会での真相解明も道半ばである。都議会各会派・議員は、自らが「豊洲市場の移転」に対して取ってきた態度を有権者に説明する必要があるだろう。

豊洲市場への移転は、世論調査でも都民の判断が分かれている。各会派は食の安全・安心の確保と都民負担の軽減をどのように実現するのか、明確な方針を示すべきだろう。態度を曖昧にして、都知事に白紙委任して済ませるようでは、立法権と行政権を独立させた二元代表制のもと、都議会議員を選出している意義が失われる。

東京保険医協会が強い関心を持つ問題は、①国保の広域化と国保料値上げ②後期高齢者保険料の値上げ③地域包括ケアシステムの問題点④地域医療構想を通じた病床削減計画⑤軽度者の介護保険はずし⑥感染症対策⑦待機児童問題などである。協会はこれまでさまざまな課題を取り上げ、都福祉保健局、都議会各会派と懇談を重ねてきた。選挙戦を通じて、医療・福祉政策が存分に語られ、社会保障を充実させようとする都議会議員が数多く誕生することを望む。

(『東京保険医新聞』2017年6月15日号掲載)