保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【寄稿】国保の都道府県化は加入者の立場で

公開日 2017年08月02日

東京保険医協会 政策調査部長 須田 昭夫

日本に住む人は、何らかの公的医療保険に加入しており、「国民皆保険体制」と呼ばれます。公的医療保険の加入者数は、協会健保3,639万人(28.3%)区市町村国保3,303万人(25.7%)組合健保2,913万人(22.7%)後期高齢者医療制度1,577万人(12.3%)その他11%などとなっています。

国民の4分の1が加入する区市町村国保(以下、国保)の財政は、政府からの補助金と区市町村の一般会計繰入金で支えられてきましたが、政府からの補助金が半減して運営が苦しくなっていました。
ところが2018年度からは国保の運営を都道府県に任せて、国が手を引こうとしています。さらに区市町村の行ってきた繰入金も原則禁止されようとしています。補助金の減少が国保料の値上げを招き、加入者の生活が破たんすることが懸念されています。

厚労省の調査に見る国保加入者の職業は、1965年には農林水産業42.1%、自営業25.4%、被用者19.5%、無職6.6%でしたが、2015年には農林水産業2.5%、自営業14.5%、被用者34.1%、無職44.1%、などとなっています。農林水産業と自営業(合計約7割)が、無職者と被用者(合計約8割)に置き換わっています。

約44%におよぶ無職者には、定年退職者、リストラ失業者、病気退職者、65歳に達した障害者、等も含みます。一方、約34%になる被用者の多くは、派遣やパートなどの非正規雇用者であることも指摘しなければなりません。国保加入者の多くは、保険料を支払う力が大きくはないのです。

2017年度の加入者一人当たりの年間所得は、区市町村国保83万円、協会けんぽ137万円、組合健保200万円でした。また国保には高齢者・有病者が多く、加入者一人当たりの医療費は、他の医療保険の2倍以上になっています。所得が2分の1以下、医療の費用が2倍以上、しかも雇用者負担がない、という国保加入者は、いまでも組合健保加入者の約2倍の保険料を負担しています。

国や自治体の支援を増額して、国保料を2分の1以下にしなければ、国保加入者の生活が成り立たない現実を見る必要があります。国保の都道府県化に伴って、国と自治体の支援を打ち切ったりすれば、閻魔さまも真っ青になるでしょう。

東京都は国保の財政を「健全化するため」に全国に先駆けて、国保料の差し押さえ件数と、保険証を取りあげて発行した資格証明書の数を市区町村に競わせて、褒賞金を与える制度を発足させました。これは国民よりも大規模開発や公共事業を優先させる国政と都政が進めてきた路線の勢いであって、おそらく小池都知事はご存知ない。今後は真の都民ファーストに向かうことを期待して、声援を送りたい。

(『東京保険医新聞』2017年7月25日号掲載)

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