保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

〔杉並版〕「針刺し/血液曝露事故マニュアル」

公開日 2017年09月08日

キッカケは協会の感染症研究会エイズ拠点病院と24時間連携

協会杉並支部長  加藤 章(杉並区・成宗診療所)

きっかけは2016年6月に開催された東京保険医協会の感染症講習会である。演題名は「医療従事者が針刺し損傷を受けた場合の対応」。講師は荏原病院の大西健児先生でした。

針刺し損傷への対応としての同意書《会員専用ページ》にて公開していますので、ご活用ください。
なお、この同意書については、「感染症講習会」(2016年6月4日)で講師をされた大西健児先生(東京都保健医療公社荏原病院副院長)のご協力を得て掲載しています。

講義のなかで、HIV針刺し損傷の対応として、HIV抗体キットがない、あるいは抗HIV予防内服薬を保有していない医療機関では、あらかじめHIV感染症を扱う近隣の医療機関と対応を協議しておく必要があると強調された。理由は針刺し損傷を起こし体内にHIVウイルスが入った可能性がある場合、数時間以内の予防内服が望ましいからである。

多くの開業医は、自院ではHIV抗体キットやツルバタ、アイセントレスといったHIV予防内服薬を扱っていないのが現状である。

幸い杉並区には荻窪病院というエイズ拠点病院があり、故・花房秀次理事長に針刺し事故のマニュアル作りに関する相談をさせていただき、2016年8月に杉並区における針刺し事故のマニュアル作成に向けての講演が実現した。この講演内容を基に、杉並区医師会の病院救急医療部が中心となり2016年9月に「針刺し/血液曝露事故マニュアル」が完成した。以下に当マニュアルの特徴を記載する。

▽荻窪病院と河北総合病院が24時間対応。
▽採血は各医療機関の感染症用のスピッツ(生化学用)で対応。
▽患者の採血中に誤って、私が針刺し事故を起こした場合、事故者である私が診療業務などにより、ただちに連携病院へ受診することが困難な場合、手すきの診療所職員が連携病院に患者と事故者である私の採血検体と所定の用紙を持参することにより、血液検査などの初期対応が可能。結果により治療の必要性が認められれば受診する。
▽患者がHIV陽性で血中ウイルス量が多い場合、可能な限り早期に受診する。治療により血中HIV RNAが検出限界以下に抑制されている場合は、内服の必要なし。なお、針刺し/血液曝露事故のマニュアル作成に当たっていくつかの問題点も判明した。

現行のHIVスクリーニング検査での高い擬陽性率、抗HIV剤の予防内服に関する注意点、そして費用に関する点などである。以下、費用面に関して簡単に触れる。

針刺し/血液曝露事故に関する費用は自費で支払い、後日労災保険の手続き後に返金を受ける。万が一HIV予防内服薬を1カ月服薬しなければならない場合は、月30万円程度の費用がかかる。残念ながら事業主は労災保険の適用にならず、針刺し事故対応の個人保険に入っておく必要がある。幸い東京保険医協会には事業主も労災保険の対象となる「労働保険事務組合」の特別加入という制度(下記)があるので、ぜひ活用してほしい。

現在都内には44のエイズ診療拠点病院がある。今後はこれらの病院や感染症科を有する病院を核にして、周辺の開業医との間に針刺し/血液曝露事故に関するネットワークが構築されることを期待したい。協会としてもぜひ協力をお願いしたい。

東京保険医協会の労働保険事務組合の特別加入とは・・・?

院長・家族従事者も労災保険に加入できる制度です。
本来、労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う労災保険は、事業主には加入が認められていません。
そのため、補償を受けるために民間の傷害保険に加入する必要があります。
が・・・!
労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託することで院長先生や家族専従者も労災保険に特別に加入できます!
保険料など、詳細については《労働保険事務組合》のページをご覧ください。

(『東京保険医新聞』2017年9月5日号PR版掲載)