【視点】安倍改憲阻止の大運動を

公開日 2017年09月19日

安倍9条改憲No!「全国市民アクション」を結成

全国九条の会事務局長・東京大学大学院教授小森 陽一

安倍晋三首相による九条改憲を阻止するための、一大署名運動を提起する「安倍9条改憲No!全国市民アクション」結成の記者会見が、9月4日に行われました。

発起人は有馬頼底(臨済宗相国寺派管長)、内田樹(神戸女学院大学名誉教授)、梅原猛(哲学者)、落合恵子(作家)、鎌田慧(ルポライター)、鎌田實(諏訪中央病院名誉院長)、香山リカ(精神科医)、佐高信(ジャーナリスト)、澤地久枝(作家)、杉原泰雄(一橋大学名誉教授)、瀬戸内寂聴(作家)、田中優子(法政大学教授)、田原総一郎(ジャーナリスト)、暉峻淑子(埼玉大学名誉教授)、なかにし礼(作家・作詞家)、浜矩子(同志社大学教授)、樋口陽一(東北大学・東京大学名誉教授)、益川敏英(京都大学名誉教授)、森村誠一(作家)の十九氏です。

「安倍9条改憲No!全国市民アクション」実行委員会は8月31日に結成され、九月八日に「なかのZERO」(東京都中野区)でキックオフ集会を開きました。

「全国市民アクション」には、「戦争法」に反対する2015年の大きな運動を組織し、同法廃止の2,000万人署名(1,580万筆達成)に取り組み、空前の野党共闘を実現する中心となった「総がかり行動実行委員会」に参加する各団体と、「安全保障関連法案に反対する学者の会」「安保関連法に反対するママの会」の有志が参加しています。

「九条の会」では、他団体と初めての共同をする形で、この実行委員会に参加することを決めました。去る8月29日に「総がかり行動実行委員会」と懇談し、「全国市民アクション」に、「九条の会」が組織として参加し、3,000万人署名を軸とした地域・職場・学園での対話活動、宣伝や集会などのあらゆる取り組みを共同して実践することを確認しました。

2004年6月10日の井上ひさし、梅原猛、大江健三郎、小田実、奥平康弘、加藤周一、澤地久枝、鶴見俊輔、三木睦子九氏の呼びかけに応じて、党派や政治的立場はもとより、それぞれの考え方や行動を異にする多様な人々によって「九条の会」は全国津々浦々で組織され、それぞれが独自の活動を展開してきました。したがって事務局としても、他の団体と一定の目標を持った運動で共同することで、各「九条の会」の独自性を損ねないように努力してきました。

けれども、5月3日に「2020年新憲法施行」と宣言して以来の、安倍晋三首相による9条壊憲の動きは、「九条の会」結成の原点、「主権者として」「九条をはじめとする日本国憲法を選び直し」「日々行使」することを呼びかけた「九条の会アピール」の根幹にかかわります。したがって事務局としては、呼びかけ人と世話人の合意の下に、「全国市民アクション」に組織として参加することにしたのです。

5月3日の右派改憲団体「日本会議」へのビデオ・メッセージにおいて、憲法九条について「1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方は国民的な議論に値する」と安倍首相が述べたことに注意しなければなりません。それは、この主張が、「日本会議」の伊藤哲夫政策委員・常任理事が機関紙「明日への選択」の昨年の9月号で述べていることと一致するからです。

伊藤氏は2015年の戦争法反対運動でのかつてない市民と野党の共同を分断する狙いも含めて、「自衛隊」を憲法に明記する「憲法三項追加」論の有効性を主張していました。それは「戦争法」に反対した勢力の一部に「新九条論」と称して、「自衛隊」を憲法上明記すべきだと主張するグループがあるからです。

しかし、2015年9月19日に、憲法9条違反の「戦争法」としての「安保法制」が強行採決されて以後、「自衛隊」という三文字の組織名には、この「違憲戦争法」が総体として組み込まれてしまっているわけです。その「自衛隊」という組織名を、憲法の条文として第3項で「明文で書き込む」ことは、その前にある「1項、2項」を死文化すること、つまりこれまでの平和憲法の息の根を止めてしまうことにほかなりません。

「戦争法」に反対して、共に行動した人たちの中には「自衛隊」を認めてもいいのではないかという方たちも多くいます。そういう人たちとは、「戦争法」で「自衛隊」が変質させられた怒りを呼び戻してもらう対話を重ね、安倍首相の国民ダマシの九条壊憲は許さないという一致点を形成していくことが重要です。そして「戦争法」に反対する署名実績を倍増する対話署名運動に取り組みましょう。

この運動を進めるため「九条の会」事務局は学習パンフレット『安倍9条改憲は戦争への道』(渡辺治「安倍首相の改憲発言―そのねらいと危険性」、浦田一郎「安倍首相の改憲発言―その憲法論的検討」を収録)とポスターを作りました。申し込みは以下のとおりです。全国で活用し、安倍壊憲をストップさせて、憲法九条を実現しましょう。

小森 陽一(こもり・よういち)
1953年東京生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。日本近代文学専攻。九条の会事務局長。『漱石を読みなおす』(岩波現代文庫)、『子規と漱石』(集英社新書)ほか著書多数。 

▽パンフレットとポスターの申し込み先
 TEL:03(3221)5075
 FAX:03(3221)5076
 MAIL:mail@9jounokai.jp

(『東京保険医新聞』2017年9月15日号掲載)