【解説】医療機関における税務調査の現状と国犯法・国税通則法改正の留意点

公開日 2017年10月12日

税理士法人コンフィアンス 代表社員税理士/専修大学法学部講師 益子 良一 氏

1.税務調査の現状

(1)税務調査とは

税務調査は大きく分けて、①課税処分のための調査、②犯則事件(犯罪捜査)のための調査、③徴収のための調査がある。
通常行われる税務調査は、①の課税処分のための調査=「質問検査権の行使」で任意調査である。国税通則法「国税の調査」という章(7章の2)の条文に基づき、質問検査権の行使である税務調査を行う。
質問検査権に基づく税務調査は、適正な課税処分を行うための資料を得ることを目的とした純粋に行政目的のためのものなので、国税通則法のなかで「質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」と規定している。

質問検査権の行使としての税務調査は、事前通知することが原則であるが、現状では、2011年改正国税通則法で定められた事前に通知すべき11項目が省略されているという報告もある。

また例外として、事前通知することなく税務調査することが認められている。課税庁の税務運営指針で、事前通知を行うことなく実地の調査をする場合でも、調査の対象となる納税義務者に臨場後速やかに11項目を通知するとともに、税務代理人(税理士)がいる場合はその税理士に対しても臨場後速やかにこれらの事項を通知するよう指示している。

しかし医療法人である歯科医院に無予告調査が行われたとき、顧問の税理士に通知がなされなかった事例も報告されている。
 また「行政指導」という名の下で、税務署に納税者を呼び出す「呼出し調査」という手法の税務調査が行われている。

そのような「行政指導」に対して日弁連は、「税務に関する調査においては、『行政指導』に名を借りて、納税義務者に対する事前通知や調査終了に伴う更正すべき場合の説明責任を回避してはならず、2011年に改正された国税通則法で定められた適正手続きを潜脱することはあってはならない」という要請書を国税庁長官宛に提出している。

国税通則法に定められている税務調査手続きを骨抜きにしてはならず、法律で規定された税務調査手続きはきちんと守らせることが重要である。

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(『東京保険医新聞』2017年10月5日号PR版掲載)