【談話】主張がわかりやすくなった総選挙~投票所まで歩きましょう

公開日 2017年10月18日

東京保険医協会政策調査部長 須田 昭夫

森友学園・加計学園に対する巨額の支援でお友達を優遇するのは、国政の私物化ではないかと追及されていた。疑惑を解明するために、憲法に基づく臨時国会の開催が求められていたが、3カ月以上たった9月28日にようやく召集された臨時国会は、冒頭で解散が宣言された。自己都合、追求逃れ解散と言われてもしかたない。

解散は総理の専権事項だという誤解から独断でよいと擁護されたが、憲法をよく読めば、解散は内閣が決定することである。重要な決定を個人が恣意的に行うことは、民主主義や議会主義になじまない。

包括的なキャッチフレーズを汎用する安倍総理は、突然の解散理由を少子高齢化と北朝鮮問題に対する「国難突破解散」と命名した。少子高齢化対策とは、2年後の消費増税を保育や教育にも使うという変更で、自民党内でも驚きをもって迎えられた。

突然の選挙の衝撃は民進党を解党して、政治をわかりやすくしてくれた。民進党は、改憲右翼と言われる日本会議に所属する人から、護憲を貫く人までの集団であった。このため軸足が定まらず、迷走しがちであった。今回、民進党員で日本会議に所属していた人は、「希望の党」に合流した。そして護憲リベラル派は、「立憲民主党」を立ち上げた。政党の性格がすっきりして、わかりやすくなったと言える。

自公の与党は選挙公約として、(1)憲法9条改正、(2)安保法による“能力”向上加速、(3)原発重視、(4)消費増税、などを推進することを明言した。希望の党は、改憲と安保法(戦争法)容認を公認の条件にした。原発ゼロの公約も「原発は規制委員会の決定に従う」と言い、再稼動を容認した。消費増税は凍結なので、解凍の可能性もある。維新の会もほぼ同様だが、改憲と原発には積極的である。自・公・希・維は改憲・原発連合と言えるだろう。リベラル勢力(立憲民主、共産、社民)は、護憲、原発ゼロ、戦争法廃止、消費増税反対で、自民党とは真逆の方針である。

政治の目的は戦争回避と基本的人権の擁護である。この二つを実現するのは対話と社会保障である。かつて日本は富国強兵策の果てに、無謀な戦争に突入して夥しい人命を奪ったことを、忘れてはならない。

軍備の増強は国民の生活を圧迫し、軍事的な緊張を高めて、戦争に繋がるおそれがあり、慎重な判断が必要だが、審議未了で強行採決を繰り返す国会には不安がある。

また、福祉は富の再分配であり、所得の不均衡を緩和するしくみである。所得が少ない人は所得のほとんどを消費に回すが、豊かな人は所得の一部しか消費に回さない。消費税は貧しい者の負担感が大きい税である。福祉を口実にした消費税が現在、すべて法人減税に流用されているのは、二重の裏切りである。8%への消費増税から未だに立ち直れない経済に、10%への消費増税は重すぎるだろう。

今回の選挙の選択肢は、少数に絞られてわかりやすくなった。日本の未来をきめる権利と義務と、自分自身の健康のために、投票所まで歩きましょう。

(『東京保険医新聞』2017年10月15日号掲載)