国保の都道府県化で区市町村の繰入金がなくなると国保料が3割アップ

公開日 2017年11月09日

第1回 国保運営協議会が開催

 現在、区市町村は国保料の上昇を抑えるため、一般会計から法定外繰入金を国保財政に投入している。しかし、国保の都道府県化は医療費適正化計画と連動しており、医療費の増加が直接、国保加入者の負担に反映するように、国は法定外繰入金の解消を求めている。

東京都が試算 年額14万円超に

9月20日に開かれた第1回東京都国民健康保険運営協議会では、法定外繰入金をなくすと、保険料が3割も上昇するという試算が東京都から示された(下図)。

171025_01_東京都の国保財源構成(2015年度決算)

2015年度、区市町村は法定外繰入金として約1,169億円を投入しており、1人当たりの保険料は平均11万2,881円となっている。法定外繰入金をなくした場合、都の試算では2019年度の保険料は14万4,391円となり、2015年度の保険料額と比較すると平均28%増、武蔵村山市などは58%増となる。

当日は、「解消・削減すべき赤字」として医療給付に関わる法定外繰入金を名指し、その「計画的・段階的な解消」に取り組む必要性を明記した『東京都国保運営方針』(素案)も配られた。

委員からは「都民350万人が加入する国保の保険料を3割も引き上げかねない重要な問題。十分な協議を行うべきだ」との意見が出され、都国保運営協議会会長の土田武史氏(早稲田大学名誉教授・元中医協会長)も、「ご意見があったので、検討を」とまとめた。しかし、都の担当者は「次回、11月の運営協議会で国保運営方針の諮問・答申を行いたい」と述べるにとどまり、わずか2回の開催で、国保広域化の運営方針をごり押ししようとする姿勢が、露骨に現れた会議となった。

法定外繰入金は全国の区市町村で3,856億円、そのうち東京は1,169億円と3割を占める。それでも国保料は上がり続けており、これを国の方針通りに「解消・削減」することは国保加入者の生活と命を脅かすことに他ならない。無職者・高齢者・有病者・低所得者の比率が高い国民健康保険制度は、加入者の保険料によって制度を維持するには構造的に困難なことは明らかである。加入者負担の軽減と給付の充実には国・都・区市町村の公費拡大が不可欠だ。

(『東京保険医新聞』2017年10月25日号掲載)