【談話】「衆院選挙から見えてきたもの―48%の得票率で75%の議席」

公開日 2017年11月13日

東京保険医協会政策調査部長  須田 昭夫

政治の私物化を追求された安倍総理は、野党に不意うちをかけた「国難突破解散」で、国民の信任をうけたと主張するための総選挙をおこなった。自公の与党は318議席から313議席にへらしたが、総議席数の3分の2を確保した。

民進党は野党の体制固めをあせり、希望の党との合流をはかった。しかし、小池百合子氏の主張する憲法改正や安保法を容認できないひとたちのうち15名は、立憲民主党をたちあげてたたかい、55名が当選して野党第1党になった。また、小池氏から“排除”されたひとたちを含めた21名は無所属で闘い、18名が当選した。

希望の党は民進党からの44名など、57名の現職をふくむ198名でたたかい、50名が当選した。希望の党は野党共闘を妨げたが、大阪には一人も候補を立てず、維新の党を支援した。

共産党は83の小選挙区で立候補を見送り、立憲民主17、無所属14、社民1名の候補の当選を助けた。共産党自身は21議席から12議席に減少したが、共闘の成果をよろこぶ見解を発表した。維新は比例代表の得票率を約1割へらし、14から11議席に減少した。社民は2議席を保った。女性の当選者は47名で、議席総数465の1割であった。

森友・加計学園の疑惑解明のために要求された臨時国会の冒頭解散は、追求のがれの「自己都合解散」と評された。国会の解散は、国民の信託をうけた国会議員の任期をねこそぎ奪うことになる。不祥事をおこした議員をかばうときの態度との、バランスを考えるべきだろう。解散を総理大臣個人の判断で行うのはあまりにも横暴である。安倍総理はしばしば感情的で、子どものけんかに近い。すくなくとも憲法第7条に従った冷静な閣議決定が必要だろう。

マスコミは選挙開始時から、「与党が圧倒的に有利」の報道を開始したが、予断を与えるような報道は慎むべきだという、良識を守るべきだろう。

今回の選挙は、記憶に残る限りで最悪の天候だったが、投票率が54%となり、第2次安倍政権が発足した2012年衆院選の投票率(53%)に続いて、戦後2番目の低さとなった。国民を忘れた政治が続けば、政治への理解は進みにくい。為政者は、誰のための、何のための政治かを考えるべきだろう。そして有権者は、投票が自分自身の権利であるだけでなく、すべての人々と、未来のための義務でもあることを、忘れてはならない。

自民党は小選挙区の得票率が48%でも、全議席数の75%を獲得した。一方、小選挙区で落選した候補者の得票数(いわゆる死票)は、2656万票で全体の48%となり、投票者の声の半数が切りすてられた。小選挙区制は、民意を正しく反映していない。改めるべきことを改めないのは怠慢であり、狡猾のそしりを免れない。

民進党は議員の意見の幅が広すぎて、重要な場面で迷走する原因となっていたが、立憲民主党の方針がわかりやすくなったことは、国民にとって大きな収穫であった。今後は自民党のよきライバルとして国政を担いうる政党となり、健全な議会運営に貢献することを期待したい。

(『東京保険医新聞』2017年11月5日号掲載)