【主張】悲しくて切ない高齢者の患者負担

公開日 2017年12月20日

家族の収入を当てにする仕組み

医療機関を利用する際には、いずれかの医療保険に加入している必要がある。後期高齢者(75歳以上、一定の障害がある人は65歳以上)は後期高齢者医療の被保険者となる。保険を使い医療機関を受診するとき、必要なのが一部負担金である。一部負担金は療養担当規則に基づき新規保険医療機関指導の際に必ず徴収するように指導される。

後期高齢者医療の自己負担の割合は毎年8月1日に判定されている。実際に、このような例があった。在宅訪問診療をしている82歳男性、痛風での関節炎、脊柱管狭窄症がある。8月から自己負担が1割から3割に変わった。何とかタクシーで通院することにして、訪問診療を終了した。10月になり、妻が役所に交渉、また1割に戻ったので11月より訪問診療を再開した。

この仕組みについて役所で一般論を教えてもらった。

後期高齢者が世帯に1人

住民税課税所得が145万円未満なら自己負担は1割。145万円以上なら現役並み所得として3割になるが、収入額が383万円未満なら1割。ただし収入額が383万円以上でも同じ世帯に他の医療保険制度に加入の70歳~74歳の方がいる場合は、その方と被保険者の収入合計額が520万円未満の場合(つまり同居の方の収入が少ない時)は1割。若い人の同居は無関係。

後期高齢者が世帯に複数

同じ世帯の被保険者全員がいずれも145万円未満の場合は全員1割。
同じ世帯の被保険者の中に145万円以上の方がいる場合、現役並所得として全員3割。この場合、収入合計額が520万円未満の場合は1割になる。
ただしこの変更には毎年申請が必要で、役所の窓口の方は住民税課税所得が145万円以上の方には申請書を送っているとの説明であった。



前述の例は、妻は今年76歳、不動産の会社に勤務。75歳で後期高齢者保険になったため、同一世帯に2人の後期高齢者医療被保険者数となり、妻の住民税課税所得が145万円を超えていたため現役並所得として2人とも3割負担になった。同時に送られてきた基準収入額適用申請の書類を見過ごした為自己負担の割合がそのまま適応された。妻が問い合わせ、2人の収入合計額が520万円未満であり、申請して認定され、1割になったという経過である。

何だか悲しくて切ない。歳をとるほど身体の不調は出てくる。74歳まで1割なり2割だった人が更に75歳という高齢者になって3割になるとはひどすぎる。同居の高齢者の収入で判定するのでなく、本人の収入で決定してほしい。結局一人ひとりが被保険者といいながら家族の収入を当てにするような仕組みになっている。また親切に該当者には書類を同封するというが、書類が複雑で用語も複雑、その意味が分からない人も多いのではないだろうか。

身近にも後期高齢者になり悪性疾患発症、自己負担3割で闘病している人がいる。高額療養費も上限額があがり、医療をうけるのは贅沢だといわんばかりの制度の早期の改善を求める。

(『東京保険医新聞』2017年12月5・15日合併号掲載)