都・国保運営協議会“法定外繰入金は解消・削減すべき「赤字」”

公開日 2017年12月25日

東京都国 保運営方針を諮問・答申

11月21日、第2回東京都国保運営協議会が開催され、「東京都国民健康保険運営方針(案)」が諮問され、出席委員の賛成多数で小池百合子都知事に対して答申された(反対委員は1人)。

運営方針は、国民健康保険制度を「被保険者間の相互扶助を基本とした社会保険制度」と規定した。国民健康保険法などに照らしても法的根拠のない「被保険者間の相互扶助」という概念を明記し、国・都道府県が国保制度において果たすべき役割を脇に追いやった。

国保料の高騰を抑えてきた「法定外一般会計繰入金」については、「解消・削減すべき赤字」だと定義し、「原則として早期に解消・削減を図る」とした。

保険料を徴収する区市町村に対しては、区市町村規模別の「目標収納率」を設定した。都は国民健康保険特別調整交付金を、収納率向上の取り組み成績が良好な区市町村に交付しており、「目標収納率」の設定によって、自治体をさらなる滞納処分・差押え競争に駆り立てる恐れがある。

保険料の激変緩和は6年で終了見込み

都道府県化により、区市町村は定められた額を「納付金」として東京都に支払うことになる。この納付金制度の導入により、被保険者の保険料負担が急激に増加する場合、区市町村に対して、国の公費と都の繰入金を活用して激変緩和措置(財政支援)が実施される予定だ。しかし、激変緩和措置は6年しか実施が確約されていないばかりか、逓減されていく見通しだ。今後、区市町村の都への納付金額は、激変緩和措置の逓減にともなって増加していき、被保険者の保険料負担にはねかえることになる。

1人当たり国保料 法定外繰入金なければ3割増

2018年度1人当たり保険料の算定結果・都試算
2018年度(法定外繰入なし)
2016年度(法定外繰入あり)
伸び率
(A/C)
152,511円 118,172円 129.1%
区市町村による法定外繰入がなくなれば、激変緩和をしても2018年度の国保料は2016年度(C)と比べ、29.1%増に。

国保運営協議会では都から2018年度1人当たり保険料の算定結果が報告された(上表)。

都の試算では、区市町村が法定外一般繰入を行わなかった場合、2016年度と比較して保険料が3割増加する。都は「最終的な保険料を決めるのは区市町村」との立場を取っており、各区市町村が保険料の高騰を抑えるために、法定外繰入を継続するかどうかが焦点になる。
激変緩和措置の逓減や高齢化、医療給付費の増加などにより、都への「納付金」は年々増え続けることになり、区市町村は法定外繰入金を毎年増額しないかぎり、保険料の上昇を抑えることができなくなる。

国保料の負担軽減は国と都の責務

国民健康保険法は、国保制度の目的を「社会保障の向上に寄与する」と規定している。国保料が上がり続ける原因は、国保の国庫負担割合を削減し続け、国保制度に対する国の責任を果たしていないことにある。

東京都は国の方針に従い、法定外繰入の解消・削減を運営方針に明記し、区市町村に保険料高騰の責任を押し付ける態度を取っている。誰もが安心して払うことができる保険料の実現に向けて、全国トップの財政規模を誇る東京都として財政負担を強化すべきだ。

12月都議会定例会で条例案の可決ねらう

国保運営協議会は9月20日と11月21日のわずか2回しか開催されず、国保運営方針(案)に対するパブリックコメントの募集も行われなかった。国保加入者に内容を知らせず、声さえ聞かずに運営方針を策定することは許されないだろう。

現在開会中の都議会第4回定例会(12/1~15)には、区市町村が都に納める納付金や、都が区市町村に支払う交付金などを定める条例案が提案される。協会は12月19日に国保問題研究会「広域化でどうなる!?国保制度と国保料」を開催するなど、国保問題に引き続き取り組んでいく。

(『東京保険医新聞』2017年12月5・15日合併号掲載)

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