保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【パブリックコメント】「平成30年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(現時点の骨子)」に対する意見

公開日 2018年02月01日

東京保険医協会は1月19日、厚生労働省保険局医療課宛に「平成30年度診療報酬改定への意見」として下記内容を提出した。

「平成30年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(現時点の骨子)」に対する意見

2018年1月19日
研究部長  申 偉秀

Ⅰ 地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進

Ⅰ-2 かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の機能の評価

(1) かかりつけ医機能を推進する観点から、地域包括診療料等について以下のような見直しを行う。
① 患者の同意に関する手続きや受診医療機関の把握を担う実施者の要件を緩和する。
② 継続的に受診していた患者が通院困難となった場合に訪問診療を提供している実績がある場合の評価を充実させるとともに、24時間の対応体制に係る要件を緩和する。

【上記項目に対する意見】
そもそも主治医とは各地域において患者・家族が主体的に選択するものであり、診療報酬点数表において規定されるべきものではありません。しかし地域包括診療料等は、事実上1患者につき1保険医療機関が算定する設定であり、患者のフリーアクセスを制限する危険性があります。
患者のフリーアクセスを制限する危険性のある地域包括診療料等は廃止した上で、地域の第一線医療を担う保険医の診療技術に対する適正な評価として、初・再診料の引き上げを要求します。

Ⅰ-4 外来医療の機能分化、重症化予防の取組の推進

(3) 外来医療のあり方に関する今後の方向性を踏まえ、外来医療における大病院とかかりつけ医との適切な役割分担を図るため、より的確で質の高い診療機能を評価する観点から、かかりつけ医機能を有する医療機関における初診を評価する。

【上記項目に対する意見】
初・再診料は、医師が患者を診療した際の最も基本的な技術評価であり、医療機関経営を安定させる十分な原資となるだけの点数設定が必要です。
地域で第一線医療を担っている医療機関を適正に評価する観点からも、現行の初・再診料の引き上げこそが必要であり、「かかりつけ医」関連点数の算定有無等で格差を設けるべきではありません。

Ⅰ-5 質の高い在宅医療・訪問看護の確保

(1) 在宅患者訪問診療料について、在宅で療養する患者が複数の疾病等を有している等の現状を踏まえ、複数の診療科の医師による訪問診療が可能となるよう、評価を見直す。
(2) 在宅医療の提供体制を充実させるため、地域において複数の医療機関が連携して24時間体制の訪問診療を提供する場合の在宅時医学総合管理料等の評価を新設する。

【上記項目に対する意見】
複数の診療科の医師による医学管理等が必要な患者に対して訪問診療を行った場合、それぞれ在宅患者訪問診療料を算定可能とする改定案に賛同します。
ただし、患者の病態に応じてそれぞれの医師が専門的な医療を提供することになるため、現行の833点から点数を引き下げることなく、一物多価の報酬設定にもしないよう要望します。

Ⅰ-5 質の高い在宅医療・訪問看護の確保

(4) 在宅時医学総合管理料等について、患者の状態に応じたきめ細やかな評価とするため、算定患者の状態に係る要件を追加する。また、かかりつけ医機能を有する医療機関による在宅医療への円滑な移行を推進する観点から、在宅時医学総合管理料等及び地域包括診療料等の取扱いを見直す。

【上記項目に対する意見】
在宅時医学総合管理料等について、これ以上複雑な点数設定とし、段階的に評価を引き下げることには反対します。そもそも、同じ建物内に複数の患者がいても患者毎の医学管理内容は変わりません。同じように治療しているにもかかわらず、同一建物内の患者数の多寡で算定点数が異なることについては、大変不合理です。特に、「単一建物診療患者人数」が9人の場合と10人の場合で算定点数が変化することは、患者の理解が得られず、医療現場では大変苦慮しています。「単一建物診療患者数」の概念は廃止するように強く要望します。

Ⅰ-5 質の高い在宅医療・訪問看護の確保

(5) 往診料が算定可能となる場合がより明確となるよう算定要件を見直すとともに、緊急往診加算について、対象患者に看取り期の患者を追加する。また、夜間休日加算の取扱いを適正化する。

【上記項目に対する意見】
夜間休日加算の引き下げに反対します。そもそも夜間休日加算に点数水準の妥当性については中医協の議題には挙がっておらず、唐突かつ拙速に思えます。まずは具体的データに基づいた議論を進めるべきです。

Ⅰ-6 国民の希望に応じた看取りの推進

(1)訪問診療のターミナルケアに係る評価について、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」等も含めた対応をすることを要件とする。また、訪問看護のターミナルケアに係る評価について、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」等も含めた対応をすることを要件とするとともに、その評価を充実させる。

【上記項目に対する意見】
ターミナルケアに係る評価に「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」等も含めた対応を要件化することに反対します。それぞれの患者の看取りについて厚労省は口を挟むべきではないと考えます。終末期医療のあり方は人間の尊厳を守り、自己決定権を尊重して判断されるべきもので、現場の保険医療機関と患者の判断に委ねるべきであると考えます。

Ⅰ-7 リハビリテーションにおける医療と介護の連携の推進

(3) 要介護被保険者等に対する維持期・生活期のリハビリテーションに係る疾患別リハビリテーション料を見直すとともに、算定が可能な期間を平成 30年度末までとする。
(4) 維持期・生活期のリハビリテーションについて、介護のリハビリテーションとの併用に係る施設や人員の要件を緩和する。
(5) 医療機関と介護保険のリハビリテーション事業所で、リハビリテーション実施計画書を共有化できるよう、様式を見直すとともに、介護保険のリハビリテーションに移行する患者について、医療機関が介護保険のリハビリテーション事業所にリハビリテーション実施計画書を提供した場合の評価を新設する。

【上記項目に対する意見】
リハビリテーションは医療であるとの立場より反対します。維持期リハの1年延長とは、あと1年で打ち切りということです。そもそも維持期を含めてリハビリテーションは、医師が指示するPT、OT、ST等の専門職種による医療行為であると認識を改めるべきです。そして、患者の病態に応じたきめ細かな対応を担保する上でも、リハビリテーションは全て医療保険から給付されるよう制度を改めるべきであると考えます。

Ⅱ-1-3 地域移行・地域生活支援の充実を含む質の高い精神医療の評価

(11) 公認心理師に関する国家試験が開始されることを踏まえ、診療報酬上評価する心理職については、経過措置を設けた上で、公認心理師に統一する。

【上記項目に対する意見】
医療現場が混乱しないように、経過措置は充分な期間を設け、慎重にすすめていただくよう、要望します。

Ⅱ-2 医薬品、医療機器、検査等におけるイノベーションやICT等の将来の医療を担う新たな技術を含む先進的な医療技術の適切な評価と着実な導入

(9) 情報通信機器を活用した診療(オンラインシステム等の通信技術を用いた診察や医学管理)について、有効性や安全性等への配慮や対面診療の原則といった一定の要件を満たすことを前提に、診療報酬上の評価を新設する。
(10) 上記と併せて、患者等から電話等によって治療上の意見を求められて指示をした場合に算定が可能であるとの取扱いがより明確になるよう、電話等による再診料の要件を見直す。

【上記項目に対する意見】
情報通信機器を活用した診療について、2018年改定での評価の新設には反対します。実際の医療現場で日常多くの患者と接し、疾病の管理を行っている者として、オンライン(遠隔)で患者を診察し、疾病の管理を行うことに多くの懸念を抱かざるを得ません。例えば、①画面鮮明度等を含む情報通信機器の水準、②緊急時対応等の医療安全管理、③患者の個人情報保護、④医療事故等が発生した場合の責任の所在の担保、⑤オンライン診察に対する医学的エビデンスに基づく検討の不足等の課題が挙げられ、これらについて中医協で十分に審議されたとはいえない状況です。
情報通信機器を用いた診察および医学管理を全て否定するわけではありませんが、医療の本質は、患者と医師が「対面診療」を積み重ねていくなかで身体的および精神的状況への理解が深まり、有効な治療へとつながっていくものだと考えています。したがって、患者の利便性ばかりが強調され、安全性や責任の所在の担保等の議論がされないまま、医療費削減と医療の営利市場化を目的とするような「情報通信機器を活用した診療」の推進は見直すべきです。またエビデンスに基づいた一定のルールなしに、遠隔での診療を拡大することは都市部の医療機関への受診の集中を招き、地域医療の充実に逆行するとの指摘も出ており、オンライン診察・医学管理料(遠隔診療)の診療報酬への評価は慎重に行われるべきであると考えます。
また、電話再診は、疾患に対する継続的な医学管理の下で「患者、家族からの求めに応じて治療上必要な適切な指示をした場合」に算定できるものです。例えば、精神科や産婦人科では患者から頻繁に電話連絡が入るケースもあり、情報が限定される環境であっても、医療機関は責任を持って「療養の給付」を提供しています。診療応需体制をとっていない時間帯に対応する際の負担も決して軽くありません。患者に対して必要な医学管理を継続するためには、臨床現場の医師のモチベーションを下げるような乱暴な改定を行うべきではないと考えます。「オンライン診察に係る再診料の新設」と連動させて電話再診に係る評価を引き下げ、再診料に一物多価の報酬設定を導入することは、絶対に止めて下さい。

Ⅳ-6 医薬品の適正使用の推進

(3) 向精神薬の多剤処方やベンゾジアゼピン系の抗不安薬等の長期処方の適正化推進のため、向精神薬を処方する場合の処方料及び処方せん料に係る要件を見直す。また、向精神薬の多剤処方等の状態にある患者に対し、医師が薬剤師と連携して減薬に取り組んだ場合の評価を新設する。

【上記項目に対する意見】
向精神薬の多剤処方に対する減算規定や算定制限は撤回し、むしろそうした患者を治療する場合においては重度加算の新設を求める立場から反対します。患者一人一人の病態は異なるため、診療報酬で制限すべきではありません。医療現場では、一律の線引きによる減算規定の設置により、従来処方を受けていた薬が処方されないことで、症状が悪化した事例や不安から医師に詰め寄る鬱病や統合失調症の患者が出る等、混乱が起こっています。多剤投与が必要な患者は現実に存在しており、そうした患者にはより丁寧かつ慎重な対応が求められます。

Ⅳ-8 医薬品、医療機器、検査等の適正な評価

(4) 医療技術について、実態を踏まえ、以下のような評価の適正化を行う。
④ 血行促進・皮膚保湿剤(ヘパリンナトリウム、ヘパリン類似物質)の使用実態等を踏まえ、保険給付の適正化の観点から、必要な対応を行う。

【上記項目に対する意見】
医療用保湿剤の保険給付外し・給付制限に反対します。中医協でも、医療用保湿剤の単剤処方や一度の大量処方が“美容目的”で行われていると断定できる客観的な根拠は提示されていません。既に学会やメーカーが注意喚起を行っており、まずは今後の推移等を見守るべきです。
中医協に提出された健保連の調査も、保湿剤の単剤処方を全て「不適切な処方」と規定しており、非常に問題です。この中には、およそ“美容目的”とは考えられない高齢者や小児への単剤処方も含まれています。保湿剤治療が必要な皮膚科疾患を有する患者に対する処方は、たとえ単剤であっても制限されるべきではありません。悪性腫瘍に対する抗がん剤治療や放射線治療の副作用を軽減する等の目的だけでなく、軽症であっても保湿剤治療の継続によって皮膚の乾燥症状の悪化を防ぐことは患者のQOLを維持・向上させる上で重要です。
必要なのは、保湿剤の“美容目的”での処方が健康保険の給付外であることを周知することであり、必要とされる患者への処方が制限されるべきではありません。

東京保険医協会は1月19日、厚生労働省保険局医療課宛に「平成30年度診療報酬改定への意見」として下記内容を提出した。

入院部分に関する意見

2018年1月19日
病院有床診部長  細田 悟

Ⅰ 地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進

Ⅰ-3 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価

「(1) 一般病棟入院基本料及び療養病棟入院基本料等について、急性期医療、急性期医療から長期療養、長期療養の3つの機能について、入院医療の基本的な診療に係る評価(基本部分)と、診療実績に応じた段階的な評価(実績部分)との2つの評価を組み合わせた評価体系に再編・統合することとし、一般病棟入院基本料について、以下のような見直しを行う。」について

【意見1】入院基本料の評価の抜本的な変更は、医療現場に混乱と疲弊をもたらし、医療従事者の労働環境や患者に対して重大な影響を及ぼしかねない。また、地域における病床確保の甚大な影響が考えられることから、今次改定で入院基本料の評価方法の抜本的な変更を拙速に行うべきではない。

【意見2】医療の安全確保のためには、十分な人員の確保と管理体制の強化が必要であり、そのためには診療報酬の評価が重要となる。現行の入院基本料は、人件費・設備費・施設費が保証されておらず、医学管理や看護にかかる評価も包括されている。それぞれ評価を区分して評価することも含め、入院基本料の大幅な引き上げが必要である。

【意見3】地域によっては急性期・慢性期両方を担わなければならない病院や有床診療所がある。機能分化のために病床削減を進める地域医療構想に対し、診療報酬を関連付けることそのものが点数表の仕組みからしてなじまないことから、地域医療構想と関連付けた診療報酬改定を行わないこと。

【意見4】療養病棟入院基本料や特定入院料など包括される入院料について、高額薬剤や検査等を出来高で算定できるようにするべきである。高額薬剤や検査等が必要な患者においては入院料では賄えず病院の負担が大きくなっているため、病院が提供している医療を適正に評価をするためにも出来高算定を認めることが必要である。

「(3) 療養病棟入院基本料について、入院医療の評価体系の再編・統合の方向性を踏まえ、以下のような見直しを行う。
① 20対1看護職員配置を要件とした療養病棟入院料(仮称)に一本化することとし、医療区分2・3の該当患者割合に応じた評価に見直す。
② 現行の療養病棟入院基本料2については、病院における医療療養病床に係る医療法上の人員配置標準の経過措置の見直し方針を踏まえ、療養病棟入院料(仮称)の経過措置と位置付け、最終的な経過措置の終了時期は次期改定時に改めて検討することとし、経過措置期間をまずは2年間と設定する。
③ 現行の療養病棟入院基本料2に関し、25対1看護職員配置の要件を満たせない場合の経過措置(所定点数の100分の95を算定)については、必要な見直しを行った上で2年間延長する。」について

【意見1】介護療養病床や25対1医療療養病床は、現在も地域において必要な入院医療機関としてその役割を発揮している。高齢化が進む中で、廃止期限を延長した平成23年当初よりもますますその存続意義は重要となることから、介護療養病床や25対1医療療養病床の存在意義を積極的に認め、廃止そのものを撤回すること。