【主張】国民から医療を奪う改定は許されない

公開日 2018年02月05日

2017年12月18日、厚労省は2018年度診療報酬の改定率について、本体部分はプラス0.55%、薬価はマイナス1.65%、材料価格はマイナス0.09%、全体ではマイナス1.19%と発表した。本体部分は引き上げとなったものの、薬価、材料価格の引き下げ部分が本体に充当されない結果となった。第21回医療経済実態調査では、2016年度の一般病院の損益率はマイナス4.2%とされており、厳しい経営状況が明らかになっている。さらに医療従事者の不足が叫ばれるなか、人材の確保も困難となっている。現状を踏まえれば、わずか0.55%のプラス改定では安定した医療の提供は不可能だ。

2018年改定では、入院、外来、在宅の機能分化を推進する方針で、大病院受診時定額負担の対象医療機関拡大や、「かかりつけ」医療機関の評価等が提案されている。

入院では、入院料の7対1、10対1の統合・再編等が検討されており、抜本的な変更が提案された。また、重症度、医療・看護必要度の該当患者割合の引き上げも検討されている。2016年改定でも、重症度、医療・看護必要度基準の大幅な引き上げや項目見直し等の変更があり、医療機関に大きな影響を与えた。改定のたびに大幅な変更を行う現場を無視した態度は許されない

外来では、“より質の高い医療の実現のため、「かかりつけ」医療機関の初診を評価する”としており、初診が何らかのかたちで評価される見込みだ。しかし、地域包括診療料等を算定する医療機関を重視する方針から、初診の評価は地域包括診療料等の施設基準を満たしている医療機関のみになる可能性もある。「より質の高い医療を」というのであれば、一部の医療機関でなく、全ての医療機関が医療水準を担保できるように初・再診料の引き上げこそが必要な施策だ

在宅医療では、在宅患者訪問診療料を複数医療機関で算定可能とすることや、在宅での重症患者の医療をより促すため在宅時医学総合管理料等(以下、在医総管等)で重症患者への診療を更に評価することなどが検討されている。訪問診療料の評価の変更に伴い、複数科の医療機関がそれぞれ訪問診療料を算定できるようになることは歓迎すべきだが、併せて点数が引き下げられるようなことがあってはならない。また、在医総管等については、2016年改定で患者の状態に応じた複雑な算定要件が既に設定されている。在宅医療を担う地域の医療機関は、外来と平行して在宅医療を行っているケースが多く、算定頻度の高い在医総管等の点数の複雑化が行われれば、大きな負担となる。

さらに、オンライン診療が保険導入されるが、本来、医療は医師の対面診療のなかで有効な治療へと繋がっていくものである。患者の利便性ばかりが強調され、安全性や責任の所在の担保等の議論がされないまま、医療費削減と医療の営利市場化につながる「オンライン診療」の拙速な導入には懸念を抱かざるを得ない。

今次改定は、中長期的に医療費の削減を目論んでいることがあからさまな内容となっている。「かかりつけ」機能の推進は患者のフリーアクセスの制限にも繋がる恐れがあり、国民から必要な医療を奪う改定は許されない。
協会は、基本診療料を中心とした診療報酬の引き上げを強く求める

(『東京保険医新聞』2018年2月5日号掲載)

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