【主張】原発の闇を抜け出せ

公開日 2018年03月30日

原子炉でウラン(U)を燃やすと、地上最悪の毒性物質プルトニウム(Pu)ができる。Puの半減期は2万4千年で、安全になるには20万年かかる。ネアンデルタール人が絶滅してからまだ2万年しか経っていない。

Puはウランの250倍も爆発しやすい性質があり、原爆の材料として知られている。危険で捨てる場所がないので、Uに混ぜたMOX燃料にして、既存の原発で燃やしてしまおう、というのがプルサーマル発電である。しかしこれは、石油ストーブでガソリンを燃やすのに似て、とても危ない。MOX燃料はウランよりも融点が低く、メルトダウンしやすいのだ。

爆発の危険があるために、Puの混合比率はUに対して3%が限度であることがわかり、米英をはじめとする世界中が、危険で不経済なプルサーマル実験を中止した。ところが日本はPuを6.1%も混ぜたプルサーマル発電の研究を続けてきた。狂気の沙汰である。

プルサーマル発電はPuを減らす効果がほとんどないので、原発を動かす限りPuは増え続ける。さらに、MOX燃料は危険なPuを混入するので価格がUよりもはるかに(数倍)高価である。電力各社はMOX燃料の価格を公表していない(これも秘密!)。

事故を起こした福島第1原発のMOX燃料(1999年輸入)は、1体2億3千万円といわれ、高浜原発用(2010年輸入)は1体8億8千万円といわれた。2017年に関電が購入したMOX燃料はさらに高騰して1体10億円を超え、福島の5倍になったことが東京新聞に報じられた(12月17日)。

利に聡い電力会社が、不経済で危険な燃料を敢えて使うのは、不審なことである。福島第1原発がプルサーマルでなかったら、爆発しなかった可能性もあるではないか。株主に損失を与えることは犯罪であり、国民を危険に晒すことは企業倫理にも違反している。もしかすると、Puを保有していたいという、政府からの指示でもあるのだろうか。

原子力規制委員会が「安全基準に適合しても、安全とはいえない」などと意味不明なことを言いながら、原発再稼働を差し止めない無責任も不審である。原発はソ連、米国、フランス、ドイツ、日本で大事故を起こしてきた。今後も無事故はあり得ないことを、知るべきだ。

ドイツは1977年に大事故を起こしたグレンドミンゲン原発の解体を進めていたが、2011年、福島第1原発事故の直後に、すべての原発を約10年で停止することを決定した。8基は即時に停止し、その後2基を停止した。残る7基も2022年までに順次停止される。それにひきかえ、日本の判断力のなさはどうだ。いまだに政府は再稼働に汲々としており、安倍内閣の有力な閣僚が、原爆は合憲であるなどと言い出した。まさかとは思っていたが、Puをため込んできた魂胆が見えるようだ。

プルトニウムは地獄の王プルートゥにちなんで命名された。Puは自然界には存在しない。人間は自然界のルールに従うべきだ。地球上には太陽光の恵みがあり、ほんの一部を利用するだけで、人類に必要なエネルギーが得られる計算だ。

(『東京保険医新聞』2018年3月15日号掲載)

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