保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【銀杏並木】裁量労働制問題と診療報酬改定

公開日 2018年04月02日

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政府は働き方改革関連法案に関し、裁量労働制の一般職種への拡大を断念した。もともと年収の高い専門職を労働規制から外す高度プロフェッショナル制度を、労働時間が短くなるという報告があるとして、一般職種にも広げようとしていた。その根拠となるデータがあまりにも杜撰なことが判明し、今国会では撤回に追い込まれたのである。

通常勤務と裁量労働制での勤務それぞれのグループへの設問がもともと異なっていたほか、通常勤務には残業時間が1日45時間とか15時間とかありえないデータが少なくとも117件入っており、一方裁量労働制では1日の勤務時間4時間以下が120件あったとされている。

通常勤務には異常に長いデータが、裁量労働制には異常に短いデータが、誤って入ったという、こんな都合の良い誤りが起こるのだろうか?

このようなものが厚労省の正式報告として出され、裁量労働制に移行すると勤務時間が短縮されるかのような説明を政府が行い、国会に提出されていたわけである。

こう考えると、誤りではなく、捏造されたという疑惑、つまり、ある政策を進めたいときに政府、行政は根拠となるデータを目的に沿って捏造までしかねないという疑惑が出てきたわけである。

振り返って、診療報酬を考えてみたい。今年は0.55%のプラス改定とされているが、例年、その計算根拠は示されていない。

診療報酬は個々の診療行為と材料(以下、診療行為等)の単価とそれぞれの頻度を掛け合わせた額の総和として算出されていると考えられる。個々の診療行為等の点数は発表されているが、その頻度が公表されていないのである。

ということは、診療報酬総和が計算上増加していても、あまり実施されていないものの頻度を実際より多く、通常よく実施されるものの頻度を少なく見積もれば見かけの診療報酬は高くなる。だが、実際の医療現場での報酬は上がってはいない、むしろ下がっているという事態も出てくることになる。すなわち、単価だけでなく、頻度も明示されなければ0.55%増加という数字を信頼することはできない。

今回、裁量労働制の問題で、政策に沿うように事実と乖離したデータを根拠としている場合があるとわかったことで、診療報酬の計算根拠となるデータの信頼性を疑いたくなるのは当然である。厚労省はその疑問に答えるためにも、診療行為等の頻度等の計算根拠を公表する必要があると考える。(銀狸)

(『東京保険医新聞』2018年3月25日号掲載)

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