トップページ >東京保険医協会の紹介>2009年の活動>勤務医の過重労働を「普通」の労働に 勤務医の労働環境テーマに講演会
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協会は6月20日、協会セミナールームで聖隷浜松病院腫瘍放射線科主任医長の崔秉哲(さい・へいてつ)先生を招き「勤務医のあるべき労働環境−なぜ労働基準法・労働組合を活用しないのか?」と題した政策講演会を開催した(写真)。参加者は、医療関係者やマスコミ関係者等38人。崔先生は、勤務先の病院を労働基準監督署に告発した経験をもとに、勤務医の宿直の問題、勤務医の労働環境改善のために何が必要かを語った。
はじめに崔先生は、滋賀県立成人病センターで「名ばかり管理職」の医師に残業代が支払われていなかった実態を報告した。労基署は08年4月に成人病センターを含む3県立病院に対し是正勧告を行い、その後、県立成人病センターでは、医師が労働組合に加入し病院長と労働組合代表で36協定を締結した。崔先生は、「医師側が譲歩した面はあるが少なくとも過労死水準といわれる勤務態勢を回避し、働いた時間の賃金が保障されるという改善がなされた」と語った。
労働基準法では、公立病院に勤務する地方公務員を含め、医師も労基法による保護の対象となる。しかし、時間外勤務手当が支払われない、いわゆる『名ばかり管理職』の問題も現実に起きている。「医師が労働組合に加入することに抵抗感がある。加入すると孤立するようなことはないか」との参加者からの質問に崔先生は、「病院(使用者)は36協定を結ばなくては時間外労働や休日労働をさせることができない。労働組合に医師が加入していないと勤務医の労働条件を定めた36協定は結ぶことができない。病院としても勤務医にも労働組合に加入してもらいたいはずだ」と回答した。
現在の厚労省基準では、1ヶ月の救急診察日数が16日以上の場合、宿直者1人あたりの勤務時間は1時間以内でなければならない。1時間を超えれば、宿直業務が認められなくなる。したがって、数人の医師が宿直勤務し、数時間ごとに交代制を行っていることにしなければ基準をクリアできない。実際は宿直医が1人で数時間におよぶ深夜の緊急外来を担当しているにもかかわらず、である。多くの勤務医は、朝8時から夕方5時までの通常勤務に続き、宿直が翌朝9時まで。そして休むことなくさらに夕方6時までの通常勤務に突入する。全部で34時間から40時間の連続勤務だ。しかし現在、宿直時間は『勤務』とは見なされていないため、代休の対象にもならない。宿直中はまとまった睡眠時間もなく、いつ起こされるか分からない状態におかれるため、精神的にも肉体的にも疲労がたまる−そう訴える勤務医は多い。しかし、多くの病院で医師の増員は難しく、夜間の救急外来を交代勤務制にすることは不可能という実態がある。こうした状況を踏まえて崔先生は、「宿直時間を『勤務』と見なし勤務時間に算入すると、過労死水準を超えてしまう。そのための医師を増員しなければならなくなるという新たな問題が生じてしまう」と問題点も指摘した。
解決すべき点として、「まず勤務医の過重労働を『労基法を遵守した普通の労働』に近づけること」と強調する崔先生は、「低診療報酬である現状で病院がこの問題に取り組むと経営破綻することは明らか」として、「1病院で勤務医の労働実態を改善するには限界がある。問題の根本的解決の責任は行政と政治にある。労基法を遵守した勤務にした場合に、必要な医師数、医療費等を積み上げ、勤務医の労働問題改善と診療報酬改善を要求していくことが必要」と強調した。
最後に勤務医の労働環境改善について崔先生は、「それは社会保障費の拡充によってなされるべきであり、医療再建のため何が必要か患者・国民の理解を得て一緒に進めていくことが大切。勤務医の労働時間の解決が医療再生の大きな一歩となる」とまとめた。