保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【声明】「医療事故」の定義は国会でしか変えられない

公開日 2019年07月01日

【声明】「医療事故」の定義は国会でしか変えられない

2019年6月28日

一般社団法人 東京都保険医協会 代表理事  鶴田 幸男 

東京保険医協会 勤務医委員会委員長  細田  悟 

 

 「医療事故」の定義は長期間の議論の後、医療事故調査制度にかかる医療法の改正に盛り込まれ、同法は2014年6月18日に成立した。医療法第六条の十「当該病院等(病院、診療所又は助産所)に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかったもの」として明確に位置づけられた。法律用語である「医療事故」を国や都道府県などの公的機関や医療機関が他の意味で用いることは、法律を無視することになる上、無用の混乱を招く結果となる。現に「医療事故」を支援センターへの報告の必要性を遺族に説明した直後に「医療過誤」と誤解され、様々な紛争を招くケースが頻発している。

 ところで、2019年6月4日、北海道庁は「道立病院における平成30年度下半期の医療事故等の発生状況について」を報道発表した。この中で「医療事故の定義」として「疾病そのものではなく、医療に関わる場所で、医療の全過程において発生する人身事故一切で、医療行為や管理上の過失の有無を問わない。」としている。これは2000年8月22日に「リスクマネジメントスタンダードマニュアル作成委員会」が、国立病院・療養所および国立高度専門医療センターのための標準的マニュアルとして報告した「リスクマネジメントマニュアル作成指針」を参考にしたものと思われる。この指針は、勿論法律ではないし、国立病院等が独立法人化した際に失効した過去の遺物である。

 一方、ウエッブサイト上で「医療事故の定義」を検索すると、誤解・乱用は道立病院局だけではなく、多数の団体、機関などで認められる。これは大きな問題である。 

 「医療事故の定義を変えたい」という意見であれば、それはそれで尊重しよう。しかし、法治国家で立法権が国会にある限り、国会でしか変えることはできない。法律で制定された以上、 医療事故調査制度の健全な発展のためにも「医療事故の定義」は正しく周知され、正しい意味で使用しなければならない。

以上

参考

   医療法 第六条の十 病院、診療所又は助産所(以下この章において「病院等」という。)の管理者は、医療事故(当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかったものとして厚生労働省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)が発生した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なく、当該医療事故の日時、場所及び状況その他厚生労働省令で定める事項を第六条の十五第一項の医療事故調査・支援センターに報告しなければならない。

声明:「医療事故」の定義は国会でしか変えられない[PDF:72KB]

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