〔朝日新聞社宛〕5月11日の貴紙第1、2面記事「厚労省、半数の調査放置」 抗議するとともに懇談を申し入れます

公開日 2014年05月13日

2014年5月13日

朝日新聞
 執筆記者 各位

東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 

拝啓 迅速な情報提供につきまして敬意を表します。

 5月11日の貴紙第1面に「厚労省、半数の調査放置、対象8000医療機関、診療報酬、不適切請求の疑い」とする内容の記事が掲載されました。その中に以下のような誤解または事実誤認に基づく記事内容があり、強く抗議するものです。

 今回の記事は、都道府県別個別指導状況(以下「個別指導」)を題材とした内容のようですが、記事の冒頭で「日本の診療報酬制度は複雑で不正の発見が難しいといわれる。(中略)実態は不透明だ」と書かれています。個別指導は健康保険法73条により保険診療の規定を周知するために指導するものであります。また不正の疑いが認められるケースにおける「不正の発見」は健康保険法78条による監査において実施されております。記事の冒頭に「不正」とあるために、これではあたかも個別指導が「不正の疑い」がある医療機関に対して行われるものとの誤解を誘発する恐れがあります。この記述が極めて不適切なものであると考えます。個別指導対象機関の中には平均診療報酬請求額の1.2倍を超えた「高点数」を理由として集団的個別指導を受けて、その翌年も高点数が継続すると個別指導となる事例も増えており、個別指導自体が「不正の是正」というより、「医療費の抑制」の意味もあることをご理解頂きたく思います。「医療機関の大部分は、献身的かつまじめに医療提供を行っていても、診療内容を問わず点数が高い医療は悪いというのであれば国民は必要な医療さえも受けられない「萎縮診療を招く」ことにつながることに留意願いたいと思います。

 貴紙掲載の記事においては健康保険法73条や78条の取り扱いについては一切説明がなく、厚労省、または厚生局がうやむやにして、医療機関への指導を行っていないと記載されておられます。その結果、医療機関への「不正請求」が放置されていると読み取れ、まことに不適切な記述であります。

 また2面に個別指導に立ち会う医師会等の同僚医師が、指導官の指導内容に苦言を呈するような内容がありますが、実態は全く反対でほとんどの医師会立ち会いの医師は指導官の指導内容に問題があっても黙認し、近い過去にも東京の歯科医師が激しい指導を苦にして自殺した例などこれまでも不適正な指導が問題となっています。当協会でも実際の不当な個別指導に対して是正要望をしており、同時に被指導者の同意が原則の「行政指導」である個別指導の際は、被指導者の便宜を図ることは当然であり、かつ被指導者の選定した同僚医師及び弁護士の同席を求めているところです。

 以上のように今回の掲載記事には、不適切な内容が多く抗議するものであります。一方で、最近の情勢において高齢者の増加等で医療費は増加しております。必要な医療を国民に適切に提供するためには、いろいろな立場の方からの情報収集や、意見交換したうえで、当協会におきましても、今後の医療提供のあり方、医療機関における審査、指導のあり方等を模索していきたいと考えています。

 つきましては以下の要望をいたしますので、ご検討の上、対応していただきましてご回答をお願いいたします。なお参考資料として指導の根拠法令である「指導大綱」と「指導大綱関係実施要領」を添付いたしますので、ご参照くだされば幸甚です。

敬具

1、5月11日の標記記事について、訂正・追補記事を速やかに掲載していただきたいこと。

2、医療提供のうち保険診療と指導、監査のあり方等につきまして情報交換を行いたく存じますので、当協会役員との懇談の場を設定していただきたいこと。

以上

〔朝日新聞社宛〕5月11日の貴紙第1、2面記事「厚労省、半数の調査放置」 抗議するとともに懇談を申し入れます[PDF:109KB]