東京都のワクチン① 子ども予防接種の相互乗り入れ

公開日 2016年11月15日

東京都_ワクチン相互乗り入れ

23区 北多摩11市 南多摩5市―3つの地域ブロック内で乗り入れ

 上図は子どもの定期予防接種について、東京都内での相互乗り入れの状況を示している(協会調べ)。主に23区と北多摩11市、そして南多摩5市の3つの地域ブロック内で、予防接種の相互乗り入れを実施していることが分かる。

 23区では2016年度からBCGの乗り入れも開始しており、北多摩ではBCGを除いた子どもの定期予防接種を11市で相互に乗り入れている。東久留米市・西東京市・武蔵野市間でも相互乗り入れを実施している。また、南多摩5市についてはBCGを含む乗り入れとなっている。
 特徴的なのは、特別区と隣接する西東京市・武蔵野市・三鷹市・調布市・狛江市でBCGを除いて予防接種の区市間の相互乗り入れが行われていることだ。

 予防接種は区市町村が実施主体とされており、区市町村ごとに予防接種単価も異なり、事務手続きも煩雑となるため、住所地の区市町村でしか受けられない状況がある。このような状況を改善しようと進められてきたのが自治体間の相互乗り入れだ。
 協会は東京都に対して毎年提出している「東京都予算等に関する請願」で、都内全域での定期予防接種の相互乗り入れを要求しているが、都は「区市町村が隣接自治体などと相互に区域外での接種を行えるようにする取り組みについては、予防接種の実施主体である自治体間で調整すべき事項と考えている」との回答を毎年繰り返すのみである。これは、都民の福祉向上のために区市町村の事業を調整し充実させるという広域自治体としての使命を放棄するものといわざるを得ない。

 実際に隣接する特別区と市部間の相互乗り入れが行われていることを見ても、全都で予防接種の相互乗り入れを行うことに技術的困難はないはずである。

47都道府県中40府県が広域化を実現

表 定期予防接種 広域化の状況・全国〔東京保険医協会調べ(2016/9現在)〕

 〇 広域化自治体
  40府県

 〇 広域化していない自治体
  7都道府県
   北海道
   岩手県
   東京都(特別区など一部で乗り入れ)
   神奈川県(南足柄市・小田原市間など一部乗り入れ)
   大阪府(北河内5市など一部乗り入れ)
   鳥取県(3医療圏のうち同一医療圏内でおおむね広域化。県内広域化を検討中)
   島根県(県内広域化を検討中)

 予防接種の広域化は、接種率向上のために必要である。子どもの定期予防接種では全国的に見ても、広域化を実施しているところが47都道府県中40府県と、大多数である。県外の自治体で接種を行う場合も、費用還付を受けられるところも多い。また未実施7都道府県のうち、2県では広域化実現に向けた具体的な検討が始まっている(上表)。

 接種率を引き上げるために、東京都でも都民の接種機会の拡大と、利便性の向上につながる予防接種の広域化が求められている。

(『東京保険医新聞』2016年11月15日号掲載)