公開日 2017年04月12日
「外来機能の分化」や「主治医機能の評価」との名目で、いわゆる“かかりつけ”点数が次々と導入されている。関東信越厚生局・東京事務所の資料から、届出状況が確認できる「地域包括診療料」「地域包括診療加算」「小児かかりつけ診療料」「小児科外来診療料」について、その推移をみた。
「地域包括診療料」は全国的に届出施設数が伸び悩んだため、2016年4月の改定で診療所では「常勤医師3名以上」の基準を緩和し、病院では「2次救急指定・救急告示」の要件を廃止した経緯がある。見直し以降の数字をみても都内診療所の傾向は横ばい、病院は届出ゼロだ(下図)。
2016年 | 2017年 | |||||||||||||
2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | ||
地域包括診療料 | 20 | 19 | 28 | 29 | 29 | 29 | 29 | 29 | 29 | 29 | 29 | 32 | 31 | |
病院 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
有床診 | 7 | 7 | 6 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | |
無床診 | 13 | 12 | 22 | 22 | 22 | 22 | 22 | 22 | 22 | 22 | 22 | 25 | 24 | |
地域包括診療加算 | 371 | 372 | 371 | 371 | 372 | 371 | 368 | 365 | 365 | 366 | 367 | 365 | 366 | |
小児かかりつけ診療料 | ー | ー | 82 | 86 | 96 | 101 | 104 | 105 | 108 | 109 | 109 | 109 | 109 | |
小児科外来診療料※ | 2569 | 2572 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
※小児科外来診療料は2016年4月以降は届出不要となりデータなし
地域包括診療料の算定わずか9%
2015年11月の中医協資料には、「地域包括診療料等の算定状況」が示されている。届出施設で算定が可能だった対象患者(高血圧、糖尿病、脂質異常症、認知症のうち2つを有する)に対して、実際に算定した患者の割合は地域包括診療料でわずか9%、同加算でさえ62%にとどまった。
小児かかりつけ診療料届出は4%程度
一方、2016年4月に新設された「小児かかりつけ診療料」の届出数は増えているものの、「小児科外来診療料」の4%程度にとどまる。算定要件として「患者が受診している医療機関を全て把握すること」、「かかりつけ医として説明書・同意書を取り交わす」、さらに「原則として1人の患者について1カ所の医療機関が算定する」など細かな規定も影響しているものと思われる。1人の患者を1つの医療機関で「囲い込む」という政府の狙いもあるが、会員からは「小児かかりつけ診療料」の算定により一定増収につながったとの声も寄せられている。
次回2018年の医療・介護同時改定を見据え、すでに中医協では「改定に向けた検討項目」の議論を始めている。 特筆すべきは、財務省・経済財政諮問会議の「経済・財政再生計画 改革工程表」(いわゆる「改革工程表」)が中医協で配布され、工程表の内容・スケジュールを強く意識した進行がなされている点だ。
“かかりつけ”以外の受診時定額負担導入狙う
工程表は「かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担の導入」を含めた外来機能のさらなる分化を強調している。前回2016年4月の改定では、「特定機能病院・一般病床500床以上の地域支援病院」について、原則として紹介状を持参しない患者の受診に定額負担(初診5千円以上/再診2千500円以上)が義務化されている。すでに、「紹介状だけ書いてほしい」と初診で来院する患者が散見されるようになった、と本末転倒の事例も出ている。
「かかりつけ医」であれ、どのような名称であれ、重要なのは推進する側にどのような狙いがあるかだ。医療者として、患者を守るために、政府の狙いを注視していく必要がある。
(『東京保険医新聞』2017年4月5日号掲載)