関東信越11協会 指導改善を厚労省に要請、自主返還に法的根拠はあるのか

公開日 2018年08月13日

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7月4日、協会は関東信越厚生局管内の11協会・医会とともに、参議院会館内で厚労省と懇談。個別指導について、保険医の負担が極めて大きくなっていることから、11項目にわたり運用改善を求めた(下表)。

個別指導は任意の協力で実施するもの

個別指導は、ある日突然通知される。呼び出された医療機関には持参資料の点検・整備、診療体制の変更等々、多大な負担がかかる。さらに指導当日も、指導医療官の高圧的な態度がしばしば見られることや、診療内容に対する認識の相違などから心労も大きい。

協会側は、行政指導の一般原則に従って、個別指導は被指導医の任意の協力によってのみ実施され、懇切丁寧に行われるべきものである旨を周知徹底するよう求めた。これに対し厚労省側は、個別指導は特別法の健康保険法に基づくものであり、一般法である行政手続法より優先されるとし、指導の内容や実施方法等は厚生労働大臣の裁量にゆだねられていると主張した。

「自主返還」を求める権限はない

個別指導では、請求書が算定用件を満たさない場合、他のレセプトも含め自主点検の上、「自主返還」が求められる。しかし、返還請求権は保険者にある。

個別指導のなかで返還を求めるのは権限の逸脱であるとして、「自主返還の中止」を求める協会側に対して、厚労省側は、厚生局に返還を求める請求権がないことは認めつつも、不適切な請求があれば保険者に返還するのが当然であり、個別指導で確認された不当請求とともに、その症例以外に同様の事例があるか否かについて、保険医療機関の自己点検に委ねていると、従来の主張を繰り返すに留まった。

集団的個別 選定指標見直しか

一方、集団的個別指導については、対象を高点数のみで選定する不合理を指摘し、高点数を理由とした指導は行わないよう厚労省に求めた。これに対しては、高点数のみをもって指導対象とすることには問題意識を持っているとし、厚労省のなかで高点数以外の指標を検討中であることを明らかにした。

当日は、厚労省から医療指導監査室長補佐ら4人が出席。関信越協会・医会などから18人、東京協会からは拝殿清名理事が出席した。懇談は、小池晃参院議員(共産)に対するレクチャー形式で実施され、事前に協会側が提出していた「個別指導の運用改善を求める要請」に対し厚労省が回答、一時間にわたって行われた。

個別指導の運用改善を求める要請項目 

■ 行政手続法との関係、監査との峻別
1)個別指導は行政手続法第32条に規定する行政指導の一般原則に則って行うこととし、各都県の担当者に被指導医の任意の協力によってのみ実施されることを周知徹底すること。
2)個別指導の選定理由を明示すること。
3)個別指導は任意の行政指導であり、いわゆる『自主返還』を求めないこと。
■ 集団的個別指導、高点数個別指導
4)-1 集団的個別指導(高点数)及び高点数個別指導を原則行わないこと。
4)-2 当面の対応として、過去の指導歴から請求内容に問題のない医療機関を選定から除外すること。
■ 実施方法
5)指導対象のレセプトは、教育的な指導ができる必要最小限の件数として、新規個別指導と同数の10件とすること。
6)持参物を最小限とするため、指導対象月を明示すること。
7)個別指導は当日に完結することとし、行政による一方的な「中断」をしないこと。また、現在中断中となっている医療機関に対しては再開の時期を明示し、早期再開すること。
■ 通知方法
8)指導対象カルテの前日指定は行わず、全件1週間前に通知すること。
■ 日程調整
9)医療機関が個別指導を受けやすいよう、土日開催も認めることとし、日程調整に柔軟に応じるよう各厚生(支)局に指導すること。
■ 弁護士帯同・録音
10)録音及び弁護士の帯同を妨げるような言動をしないよう各厚生(支)局に周知すること。また内部マニュアルにおける弁護士への対応について、退席を命じる、指導拒否とみなす等の取り扱いの記載を削除すること。
11)電子カルテ及び電子保存している検査や画像データの持ち込みに際し、医療機関に負担をかけないよう各厚生(支)局に周知すること。

(『東京保険医新聞』2018年7月25日号掲載)