[TOPICS]オンライン資格確認 トラブルで本格運用先送り

公開日 2021年05月07日

 厚生労働省は3月26日の社会保障審議会・医療保険部会で、3月下旬から予定していたマイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムの本格運用を「10月までに」先送りすることを報告した。3月4日から始まったオンライン資格確認システムの試験運用で、患者情報が確認できないなどのトラブルが相次いだことを受けたものだ。

 3月22日時点で、健康保険組合などが加入者の個人番号(マイナンバー)をシステム登録した際、他人と取り違えるなどの入力ミスが約4千件、被保険者番号が正確に表示されないケースが約3千件、健康保険組合などが個人番号を登録していないケースが約180万件にのぼり、全国的な運用はできないと判断した。厚労省は今年10月以降、医療機関の端末から患者の薬の処方歴が閲覧できるようにするが、個人番号を取り違えたままだと他人の情報が表示される恐れもある。3月23日時点で、マイナンバーカードを保険証代わりに使えるのは24都道府県54カ所にとどまっており、オンライン資格確認システムの信頼性に疑義が生じている。

◉マイナポータルも延期 健康情報漏洩の恐れ

 厚労省は、オンライン資格確認システムと併せて「マイナポータル」での健康情報の表示も延期した。新システムに個人番号を入力する際、他人の番号と取り違えるミスが多発し、マイナポータルに他人の健康情報が表示されるリスクが生じ、重大な個人情報漏洩の可能性があるためだ。

 厚労省は、新システムの運用に合わせマイナンバー制度の個人向けサイト「マイナポータル」に薬の処方歴、特定健診の結果、医療費自己負担の軽減措置を受けている場合の疾患名等を表示し、患者自身が閲覧できる準備を進めていた。今後も加入者の新規登録でミスが生じる可能性は排除できないとしている。

◉本格運用は見直しを

 政府は、3月にオンライン資格確認のテレビCMをはじめ、マイナンバーカードを取得していない国民に発行を促す個別通知を送付するなど、多額の税金を投入し、3月下旬からの本格運用をアピールしてきた。医療機関に対しても、顔認証付きカードリーダーの申請を求めてきた。3月下旬になってからの本格運用延期は、政府方針の破綻を示しており、新システムは国民、医療機関、薬局等からの信頼を失った。

 ポータルサイトなどでマイナンバーカードを保険証として利用する申し込み手続きを済ませた人は、3月21日時点で、カードが交付された人の約9%にあたる、311万人に過ぎない(厚労省発表)。信頼性に乏しい新システムによって、保険資格・健診結果・投薬歴などの機微情報が個人番号と紐づけられれば、情報漏洩が多発することは想定されうる。本格運用は延期ではなく、根本から方針を見直すべきだ。

◉カードリーダー 補助特例期間「延長せず」

 3月26日の社会保障審議会・医療保険部会で、厚労省保険局の山下護医療介護連携政策課長は、顔認証付きカードリーダーを申し込んだ医療機関に対し、補助金を上限額(診療所42.9万円)まで全額補助する特例期間(3月末まで)について、「延長はできない」と明言した。また、4月1日以降にカードリーダーを申し込むと診療所の場合は、基準事業額の4分の3までの補助となる。

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(『東京保険医新聞』2021年4月5日PR号掲載)