[解説]介護保険大改悪メニュー「保険あって介護なし」

公開日 2022年12月09日

 厚生労働省の社会保障審議会・介護保険部会(9月26日)では、2023年度以降の制度改定に向けた検討が始まっている。部会資料「給付と負担に関する指摘事項について」には計7項目に及ぶ大改悪メニューが並んだ。政府は年内に結論を取りまとめ、2023年の通常国会で介護保険法改定案を成立させる構えで、注意が必要だ。

 10月末に開催された厚労省の審議会では医療・介護・年金のさらなる改悪、負担増の議論が始まっている。

①利用料2割・3割負担の対象拡大

 現在単身世帯で、2割負担「年金収入等280万円以上」、3割負担「同340万円以上」の所得基準を見直し、対象者の拡大を検討する。原則1割負担がなし崩しになる。1割負担でも経済的に苦しく利用サービスを減らす利用者がいる中で、財務省の財政制度等審議会は原則2割負担を提言している。75歳以上の医療費窓口負担2割化は10月から実施されており、ダブルパンチとなる後期高齢者が多数発生する恐れがある。

②要介護1・2の保険給付外し

 要介護1・2を介護保険給付から外し、要支援1・2と同じように区市町村が運営する「総合事業」への移行を検討する。総合事業は、介護の専門資格者ではなくボランティアなどに担わせる仕組みだ。自治体によってサービス内容や担い手の確保に大きな差があり、すべての利用者に同じ質のサービスが提供されない危険がある。生活援助だけでなく、訪問・通所介護も丸ごと総合事業に移行することも計画されており、「保険あって介護なし」の状態がさらに深刻になる。

③ケアプラン有料化

 現在、全額を保険給付で賄い無料となっているケアプラン作成の有料化を検討する。ケアプラン作成は介護保険サービスの受給に必要不可欠な手続きだ。作成料をブレーキ役にした利用抑制が狙われている。

④相部屋(多床室)の室料有料化

 現在、老健施設やショートステイの相部屋は部屋代の利用者負担がゼロである。部屋代の徴収を検討し、利用抑制を狙う。相部屋は低所得の利用者が多い傾向にあり、利用者の負担増による退所、新規入所の断念などが懸念される。

⑤介護保険料の支払い年齢引き下げ

 介護保険料の納付開始年齢(現行40歳)の引き下げと合わせ、受給年齢(原則65歳以上)の引き上げを検討している。支払いの前倒し、給付の先送りが狙われている。

⑥福祉用具貸与制度の販売(購入)への転換

 高齢者は身体機能の変化が速いため、状態に合った用具を「適時適切に」選べる原則貸与制が採用されている。貸与か販売かの「選択制の導入」を突破口に貸与から販売への転換が狙われている。

⑦補足給付の在り方

 低所得の施設入所者・利用者には食費・居住費を減額する補足給付制度がある。適用される収入・資産要件をより厳格化するために、マイナンバーカードの活用を検討するとしている。

◆介護負担増を許さない取り組みを

 11月28日に開催された社会保障審議会・介護保険部会では、サービス利用時の自己負担割合が2割となる対象者を拡大する方針が示された。ケアプランの有料化については今回は見送る方向だ。

 現時点でも既に介護負担は過重であり、介護離職なども報告されている。9月26日の部会に利用者代表として出席した花俣委員(認知症の人と家族の会)は「今、この時期にサービス利用を抑制する制度の見直しが論点となることに大変大きな疑問がある」と政府方針を痛烈に批判している。

 協会は、患者向けリーフレットの活用、国会議員への要請などを通じて、介護負担増を食い止める取り組みを強めていく。

 

(『東京保険医新聞』2022年12月5・15日号掲載)